音楽の都市伝説:逆再生すると聴こえてくる悪魔の囁き「リバース・スピーチ」
『月刊ムー』でも執筆するライター長田遊馬氏が音楽にまつわる都市伝説に迫る!
・あの名曲にも隠されたメッセージが
「リバース・スピーチ」。それは楽曲の歌詞や人の会話などを録音して逆再生すると、明瞭な言葉や文章が浮かび上がるというもので、リバース・スピーチ研究家デイヴィッド・ジョン・オーツ氏によって名づけられた。
もともとは、ビートルズのジョン・レノンが、逆再生すると意図的に何らかのメッセージが聴こえる、という製作を始めたことに起因する。
以後、多くのロックミュージシャンがレコードに逆再生メッセージを込めるという実験を行うようになった。その結果、ロック音楽には悪魔的なメッセージが込められているという噂が、次第に広まっていったのである。
たとえば、1971年に発表されたレッド・ツェッペリンの『天国への階段』には、逆再生すると「俺は悪魔に仕える」「私の愛しい悪魔」などといったオカルト的なメッセージが含まれているとし、若者たちを洗脳して反キリストの弟子に仕立て上げるとして批判された。その結果、1982年には米カリフォルニア州議会の公聴会で『天国への階段』が逆再生される事態になり、前述したような言葉が聴こえると主張されたのである。
だが、ツェッペリンのメンバーたちは「意図的にそのような言葉は加えていない」と弁明した。
しかし、悲劇はすぐに訪れた。この噂に刺激を受けたのか、同年、ノースカロライナ州ハンターズビルで、30人のティーンエイジャーが“悪魔が意図的に逆再生メッセージを加えてアメリカ中の若者を呪い殺そうとしている”と主張して、レコード店を焼き討ちする事件が発生したのである。
このようなニュースを見て、オーツ氏はリバース・スピーチ研究を始めた。2,000枚以上もの膨大な数のレコードをすべて逆再生し、徹底的に分析。すると多くのリバース・スピーチが録音されていることを発見した。そして、『天国への階段』に録音されたリバース・スピーチは「意図的に加えられたものではない可能性が高い」とオーツ氏は指摘した。そもそも、意図的にリバース・スピーチが加えられた歌詞の部分には、通常再生すると「違和感」が生じるという。同曲に関しては、そういった違和感が認められなかったと同氏は説明している。
・なぜ録音されてしまっているのか?
こうして、レッド・ツェッペリンのメンバーの疑いは晴れた。が、オーツ氏はリバース・スピーチが「聴こえない」とは言っていない。「意図的に入れたものではない」といっているだけで、実際に謎の言葉が録音されている。
まず、冒頭部分で「逆再生するんだ。歌われる歌詞に耳を傾けろ」、続いて「我々を苦しめる悪魔がいる小さな道具屋がある」という言葉が聴き取れる。
そして曲の最後のほうの「ふたつの道が用意されていて、道を変更するのは今でも遅くはない」という歌詞の逆再生では「私を落胆させる小道と、偽の権力を持つ、私の愛しい悪魔」という言葉が現れる。
また、「それからは逃れられない。俺は歌う。悪魔とともにいるから。人々は悪魔のために生きなければならない」と、聴き取れる歌詞もあるという。
こうしたリバース・スピーチが意図的に入れられていないとしたら、なぜ録音されてしまっているのだろうか。以前に、「ロックを通じて悪魔が人類を洗脳させようとしている」という内容をご紹介したが、これもその類いなのかもしれない。
【著者紹介】
長田遊馬
東京都出身。超常現象研究家の新星。幼少のころからUFOや超常現象に造詣が深く、オカルト界の重鎮・並木伸一郎を師と仰いでいる。専門誌「月刊ムー」でもUFO、UMA、超常現象に関する記事を執筆している。好きな音楽はヘヴィメタル。超常現象を研究するかたわら、『地獄のメカニカルトレーニングフレーズ』(リットーミュージック刊)を片手に、日夜スウィープ奏法を練習中。