音楽の都市伝説:幽霊が出ると噂の高円寺の音楽スタジオSound Studio DOMに潜入
『月刊ムー』でも執筆するライター長田遊馬氏が音楽にまつわる都市伝説に迫る!
昨年末、諸事情により更新できなかったこと、並びに本記事を楽しみにしてくださっている読者の皆様には、深くお詫び申し上げるとともに、これからも音楽の都市伝説をご愛顧くださいますよう、お願い申し上げます。
高円寺のスタジオには一体何が……
さて、2017年1発目は、以前に好評いただいた“取材モノ”である。今回は、霊が出ると噂がされる東京都杉並区高円寺のスタジオに、再びお邪魔してきた。
Sound Studio DOM――。高円寺駅前のアーケード街の雑居ビルの2階にある、創業約22年の老舗スタジオである。日々、さまざまなジャンルのバンドマンたちが集う音楽野郎の憩いの場所だ。
ビルの中に入り、階段を登るとステージで凶弾に倒れたパンテラのダイムバッグ・ダレルのポスターが、「待ってたぜ!!」といわんばかりにお出迎え。希代のメタルギタリストのポスターで、やや興奮してしまう筆者。しかし、あくまでお仕事である。
さて今回、快く取材を引き受けてくださったのはDOMの店長Sさんとスタッフの秀吉さんである。まず、筆者と同じくメタルが好きだという秀吉さんから体験談をうかがった。
「オーソドックスというか、よくあるのは……」
そう言って立ち上がった秀吉さんは、スタジオの扉の前に立って足元を指さした。
「ここで足を掴まれるんですよ。毎回というわけではないんですけど、特に忙しいときですかね? 慌てて機材を運んだりしているときに掴まれることが多いんです」
すかさずSさんが、「そこの床が斜めになってるから、あわてて躓いているじゃないか?」と指摘する。
だが毎回、人間の手の感触がはっきりとわかる、と秀吉さんはそれを否定する。しかも、同じスタッフのIさんという方も、同様の体験をしているそうだ。ただ、実際に足を掴むだけで、それ以外の霊障はないという。秀吉さんもIさん両名は、この霊と思しき存在について、“イタズラする奴”と称しており、どこかかわいらしい存在として受け入れている印象を受けた。
秀吉さんの怪奇譚はまだ続く。
「そういえばIさんはもっとヘヴィな体験してるなぁ」
DOMには4つのスタジオがある。Iさん曰く、そのひとつ、“Aスタジオ(通称Aスタ)”がヤバいらしい。
「Aスタで寝てたときに、ひとりでにドラムが鳴ったそうです。あと、天井にデカイ顔が浮き出たなんてことも言ってましたね。あとは別のスタッフのYも、Aスタで寝てたら、ドラムに起こされたらしいです」
天井に人面が浮き上がるとは驚きである。しかも、浮き上がった顔はIさんの知り合いにそっくりだったという。
その方が亡くなっているのかどうかはご本人に確認が取れなかったためわからないが、何かを伝えにIさんの元へと姿を現したのかもしれない。また、“人がいないAスタジオから物音がする”という話はスタッフの間では有名のようだ。
実際にAスタに入らせていただいたが、特に違和感はない。顔が浮き出たという天井も撮影してみたが、特に何も写らなかった。Aスタの怪異を引き起こしている原因は何なのだろうか?
秀吉さんの怪奇体験はまだまだ続く。
「実は、あそこにもいるんですよね。気になるのが……」
そう言って秀吉さんが向かった先は、スタジオの受付だった。すぐそばにベランダがあるのだが……。
「ここに居るんですよ。こんな感じで」
と、指を指す秀吉さん。正直なところ、筆者にはそこにいる“何か”はわからなかったが、写真のようなポーズでずっとそこに居座り続けているという。
「これは僕の感覚なんですけど、“こいつ”がここのボス的存在のような気がします。こいつの力にほかの存在が引き寄せられているんじゃないかな? 僕が感じる中で一番強く存在を感じるんです」
だが、“こいつ”という謎の存在は何もしない。ただそこに居るだけなのだそうだ。しかし、秀吉さんはこのスタジオで、常にさまざまな何かを感じている印象を受ける。
聞けば、どうやら“視えてしまう家系”らしい。考え事をしている際に、霊に思考を読み取られることもあるらしい。
「視ようと思えばたぶん視えると思いますけど、それは怖くてできない」
と、秀吉さんは語る。筆者も心霊系の仕事をしていると、不可解な現象につきまとわれるが、視えないものは無理に視なくていいと思っている。なぜなら、“それら”は視えてはいけない存在、または“モノ”だからである。
塞がれた天井
さて、次は店長のSさんの体験談である。
「秀吉さんに比べれば、僕の話は10分の1ぐらいですよ」
なんていいながらも、不思議な体験をしている。
「これは、ウチが朝6時まで営業していたときの話なんですけど……」
今現在、DOMさんは深夜3時まで営業しているが、かつては早朝6時まで営業していた。これは、その頃の話である。ある日、営業時間を迎えて閉め作業をしていた際、「Cスタジオ」がある3階から男性3人、女性1人が下りてきたという。このとき、Sさんは「まだお客さん残ってたんだ」ぐらいにしか思っていなかったそうだ。しかし、ふとそこで気づく。
「さっきCスタ閉めたよな……」
そう、その日はもうスタジオには誰もいない状態だったのだ。不思議に思ったSさんがCスタジオに戻って確認すると、しっかりと鍵が掛かっていた……。あれはいったい何だったのか? 4人のすぐに追いかけたが、外には人っ子一人いなかったという。
また、Cスタジオで作業をしていると、だれもいないはずの下の階から、ベースの音が聞こえることがあるという。音の出所を探ると、どうやら前述の“Aスタ”から聞こえてくるらしい。
「やはりみんなが言うようにAスタは何かあるんでしょうね……」
そう語るSさん。すると、思い出したかのように、「ウチで一番ヤバかったのが……」と二人が案内してくれたのは、受付の真上にある天井だった。
「今は塞いでしまったんで、綺麗になってますけど昔は……」
と言って顔を見合わす二人。なんでもそこには、得たいの知れない何かが潜んでいるという。ただ、何かが見えるわけでも、何かがあったわけでもない。そこに“何かがいる”と感じるそうだ。
秀吉さん曰く、
「塞いだおかけで大分いい気が流れていると思います。今は見ても何とも思わないし」
封印したこの天井こそ、DOMでおこる怪奇現象に一役買っているのかもしれない。または、秀吉さんしか感じ取れない“ボス的存在”の力の源なのか? それはわからないが、封印は解かないほうが身のためだろう。筆者は、そう思わずにはいられない禍々しさを感じた。
このほかにも不思議な体験をお聞きしたが、紙幅の都合上、割愛させていただく。
しかし、さまざまな怪奇現象が起こるSound Studio DOM。その原因は、何なのだろうか。霊感の強い秀吉さんは、こう語る。
「おそらく、霊道(幽霊が通る道)になっているんだと思います」
この店のフロアマップを見ると、螺旋状に階段が造られている。しかも反時計周りに。
「一般的に時計って右回りでしょ? それがプラスだとすれば反時計周りはその反対でマイナス。光と闇、陰と陽があるように“陰”にあたるものって、幽霊とかマイナスエネルギーを呼び寄せやすい場所になっちゃうんじゃないかと思います。まぁ、これは僕の感覚なんですけどね」
間違っていない見解に、筆者は言葉も出ない。
ふたりが放つプラスのエネルギー
しかし、以前に紹介した鹿鳴館の記事(“出る”と噂の都内老舗ライブハウスに潜入してきた)で綴ったと思うが、マイナススポットでも、プラスのエネルギーが強い人がいると、ちょっとした不思議な現象が起きても、大事には至らないケースが多い。そこで陰と陽のバランスが取れるからだ。
今回、お話を伺った秀吉さんもSさんも、恐怖体験のはずなのに、非常に気さくに語ってくれる。二人とも“妖気”が感じられず“陽気”なのだ。つまり、プラスのエネルギーが強いのである。このふたりがいるからこそ、明日のスターを目指し、日々DOMで練習するバンドマンたちに何も起こらないのだろう。
そして、バンドマンたちがスタジオ内に残した熱い思いに呼応して、DOMにいる“霊的な何か”も楽器を奏でているのではないだろうか。だから、ドラムが鳴ったり、ベース音が聞こえるのではないか。
最後に、ふたりは「音楽は気持ちをハッピーにさせてくれる魔法だ」と語ってくれた。確かにジャンルの好みは十人十色だが、音楽が嫌いという人はそうそういないだろう。音楽は人間だろうが霊的な存在だろうが、“音”を“楽しむ”ことができる次元を超越したものだということを改めて実感させられた取材であった。
Sound Studio DOM
TEL:03-3318-3569
東京都杉並区高円寺南4-25-7 五明堂駅前ビル3F
営業時間:朝10時~翌朝6時
※閉店時間は予約状況によって早まることがございます。
【著者紹介】
長田遊馬
東京都出身。超常現象研究家の新星。幼少のころからUFOや超常現象に造詣が深く、オカルト界の重鎮・並木伸一郎を師と仰いでいる。専門誌「月刊ムー」でもUFO、UMA、超常現象に関する記事を執筆している。好きな音楽はヘヴィメタル。超常現象を研究するかたわら、『地獄のメカニカルトレーニングフレーズ』(リットーミュージック刊)を片手に、日夜スウィープ奏法を練習中。