“相方”が妊娠したショックで自殺未遂……2人でデビュー目指した青春時代のすべて～元アイドルインタビュー第6回～

毎日のように流れてくる、知らないアイドルの卒業発表ツイート。アイドルを辞めた女の子たちは今どこで何をしているんだろう？

モモカさん（仮名）は、小柄で幼い顔つきとは裏腹に、不思議と落ち着いた雰囲気をしているので、20歳の大学1年生と聞いたときは驚いた。Twitterでは、自身の発達障害やセックス依存について赤裸々につづっていてファンも多い。彼女は中学高校時代、地方でアイドル活動をおこなっていたのだけど、いわゆる地下アイドルではなく、“相方”と一緒に大手事務所所属のアイドル目指してオーディションに挑む日々を送っていた。しかし、ある日相方の妊娠が発覚。パニックに陥ったモモカさんは、自殺未遂を起こしたという。

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“デビュー”はフィリピンパブだった

モモカさん

相方、サキさん（仮名）とは小学校3年生のときに出会い、音楽という共通の趣味から親しくなっていった。

「相方は、お母さんがフィリピン人なんですけど、お母さんが経営しているフィリピンパブでよく歌っているって聞いて、『私も歌いたい！』って。田舎の小さいお店だから、子供が歌っていてもお客さんが許してくれるんですよ。だから、デビューはフィリピンパブでした（笑）」

フィリピンパブで歌っているうちに、サキさんの母親にオーディションを受けることを勧められて、2人で地元のカラオケ大会やオーディションに出るようになった。そして、中学3年生のとき、モモカさんの所属していた小さな芸能事務所が、アイドルの育成に乗り出した。モモカさんもサキさんも、そのオーディションに見事合格。ほとんどの合格者は、大人数のアイドルグループに所属することになったけれど、モモカさんとサキさんだけが2人だけでユニットを結成することが決まった。

「私たちは別々に受けて別々に合格したのに2人組ユニットをすることになったんです。そのとき、『やっぱりそうなんだ！』って。運命っていうのは言い過ぎかもしれないけど、相方との強い結びつきみたいなのを感じられたんですよね」

モモカさんの、相方への思いは深い。

「私は歌もあまり上手じゃないんですけど、相方はすごく上手なんです。アイドルっていうか、アーティストっていう感じの歌い方。日本人離れしている。なんとか私も追いつきたいってがんばっても、やっぱり相方には勝てなくて……。相方はオーディションとかでもすごい成績を残していて、いつも悔しい思いをしていました。

あと、私たちって雰囲気も正反対なんですよね。私は引っ込み思案なんですけど、相方はどんな場面でも明るくて笑顔でいられるし、海が似合う感じの子で。だから私が黒だったら、相方は白。私が青だったら、相方は赤。太陽と月みたいな」

相方の妊娠で「私、終わったな」

ずっと一緒だった2人だけど、高校は別々に進学した。サキさんは公立校で、モモカさんは進学校。サキさんが余裕のある日々を送る一方、モモカさんは学校が忙しく、そのせいで相方との差がさらに開いていくのを感じていた。そのうちにモモカさんは、部活が楽しくなり、芸能活動から離れてしまった。でも、受験期になって部活を引退すると、再び芸能界への憧れがふつふつと湧いてきた。もう一度、相方と夢を追いかけてみようか。そう思っていた矢先、衝撃的な知らせを聞くことになる。

「高3の冬、小学校が同じだった子から『聞いた？　サキ、妊娠したんだって』ってLINEが来たんですよ」

芸能活動から離れたことで、サキさんとは疎遠になっていた。それでもモモカさんがサキさんのことを忘れたことはなかった。

「ずっと一緒にいたから、相方のことをソウルメイトくらいに思っていたんですよね。才能では叶わないものを感じていて、コンプレックスを感じることもあったけど尊敬していた。離れていても、相方が大きな支えでした。何をしていても『相方は何しているかな』みたいな。だからこそ妊娠したって聞いたら、もうパニックになっちゃって。携帯落としちゃって（笑）。

その足で相方の家に行ったら、誰だってくらいギャルに変わっていたんですよ（笑）。『妊娠したんだけど』って聞いたら、『そう』って。『どうすんの、これから。高校卒業していないじゃん』って言ったら、『一応産むつもり』って言われて。それから離れていた間のことを語り合ったんですけど、相方は私が活動休止した後もオーディションで良いとこまで行って、高校卒業後も大きめの養成所に推薦もらっているって。相方、育てながら通うって言うんですよ。それで彼氏とは卒業したら籍入れて一緒に住むって」

敵わないと思っていた、憧れの存在だったサキさんは、いつのまにかモモカさんの知るサキさんではなくなっていた。そのショックで、モモカさんはパニックに襲われた。混乱する頭で思ったのは、「終わったな」ということだった。

「なんていうかな。今までずっと一緒にいたのに、私が離れている間に、相方は相方で成長して違う方向に行っちゃったみたいな。なんか『私、終わったな』って感じたんですよね。2人でまたやりたいと思っていたから、妊娠って言われて混乱しちゃった。私の知っている相方じゃなくなっちゃったって。それで自殺未遂しちゃったんですよね」

違う道を進み始めた2人

衝動的に自殺未遂を起こしたものの、パニックが落ち着くと悲しみも薄れた。モモカさんは、自分のコンプレックスの裏返しとして、相方に期待をかけていた。だからこそ理想が崩れた今、相方との関係も少し変わったという。

「相方に対する見方がちょっと変わったっていうのは感じます。でも今も連絡取っていますし、実家に帰ったときは遊びに行きますよ。この前は相方の子供が1歳の誕生日だったんでお祝いしましたし」

相方が今も歌うことを諦めていないことも聞いた。

「子育てが落ち着いたら、上京していろいろやろうと思っているみたいです。あと、お母さんに子供を預けて地元で路上ライブしているって言っていました。あくまで相方は今、“お休み”しているだけなんです。やっぱり私、相方には成功してほしいんですよ。子供を産んだこととか、芸能活動の上でハンデになるかもしれないけど、そんなの吹っ飛ばせるくらいの才能があると感じているので。私は相方の夢は全力で応援したい。相方が好きなだけ歌える環境が訪れてほしいと思っています」

モモカさんだって、自分の夢を追いかけている。

「上京して声優の養成所とかにも通ったんですけど、自分が演じるよりも物語を作る方が好きだって最近気づいたんです。もともと読書が好きで、親も書く仕事をしているから、その影響もあって。あと演じたり、歌ったり、自分が物語の中で動くことは苦しいけど、書いていて苦しいことはないんです。それって向いているってことじゃないかなって。……でもたまに、自分がステージで踊っている夢を見たりするんですよね。本当はまだちょっとやりたかったんだなって、起きてから変な気持ちになるんですけど。だからアイドルをまた始めることも考えているんです。アイドルって活動を限定しなくていいところが長所ですし。だから機会があれば、ぜひ！」

――1組の恋人の破局までを聞いているようだと思った。ただ、それぞれの道を歩むことになっても、モモカさんの心にサキさんの場所が今もあることは充分すぎるほど伝わった。ユニット活動は解消したけれど、2人の関係まで終わったわけではない。彼女たちの“第2章”は、どんなものになるのか？　それは未来の2人だけが知ること。