ネットでバッシング受け“ライブ型歌い手”に転向「あんなん誰が書いてんねん!」~元アイドルインタビュー第7回~
毎日のように流れてくる、知らないアイドルの卒業発表ツイート。アイドルを辞めた女の子たちは今どこで何をしているんだろう?
写真を見て、「あっ!」と声が出た。この人、ネット上でよく叩かれている人じゃないか……。インタビューOKのメールをくれた相手は、関西を中心に“ライブ型歌い手”として活動する長門さくらさん。ライブ活動自体は続けているものの、2016年2月からアイドルを名乗るのをやめたのは、やはり激しい誹謗中傷のせいだった。
2ちゃんの書き込みで「Gランク」
「もうアイドル名乗る意味ないかなって思ったんですよね。ライブに出ても、音痴とかブスとか言われて。今日はライブのために東京に来たんですけど、昨日『ライブが成功するようにって神社でお願いしてきました』みたいなツイートをしたんです。そうしたら、『神社行くな。巫女さんが可哀想』って叩かれて。神社でお祈りするのもダメなの(笑)? 心ズタズタですよね。2ちゃんねるにも晒されています。日本橋のアイドルをランク付けするみたいなところだったんですけど、最低のGランクでした。あんなん誰が書いてんねん!」
長門さんがアイドル活動を始めたのは、2010年10月。単調なフリーター生活を何か変えたいと思っていたときに、当時流行していたSNSのmixi(ミクシィ)で、ライブ出演するアイドル募集の書き込みを見つけて、ステージデビューを飾った。すでに成人済みでの、遅咲きのアイドルデビューだった。
「mixi全盛期だったんで、アイドル関係のコミュニティで出演者募集がかけられていたんです。そういうのを探して、イベントに出て……って。2010年に活動開始したって言うと長いけど、最初半月くらい活動したら、3年くらい休んじゃった。オファーがないっていうのも理由だったし、知り合いから『お前の歌は下手くそなんだよ!』って言われて絶望を味わったのもあるっていう……」
活動休止中も、たまにアイドルコミュニティに書き込んでいた。そのためか久々のオファーがあり、2014年6月に復帰。やはりステージに立つ喜びは忘れられないものだったのだという。
「私の歌を聞いてみろ」
けれど、いつしか長門さんはアイドル活動の中で、ネット上の誹謗中傷に悩まされることになる。現在は“ライブ型歌い手”を名乗っており、アイドルの看板を外したことでバッシングも多少落ち着いた。しかし、ライブ型歌い手とは具体的にどんな存在なんだろう?
「やっぱりね、アイドルっていうのは、キラキラした可愛いものだと思うんです。歌い手っていうのは、もっとエンターテインメント志向なんじゃないかな? 演歌でもなんでも挑戦するぞ、みたいな。歌い手は、歌手とはまた違った存在です。歌唱力を優先するつもりはないし、歌手になる気はありません。そもそも音痴って何度も叩かれていますし。自分では別に下手とは思っていないんですけど……」
アイドル活動を始めるまで、自分の容姿や歌唱力に関して強く意識したことはなかった。
「何も気にしていなかったんです。でもステージに立ったら、いきなり評価の対象になるし、単なる悪口をぶつけられることもある。それは活動を始めてから痛感した部分です」
それだけバッシングを受けてもステージに立ち続けるモチベーションとは一体何だろう?
「2ちゃんねるで悪口を書かれると、すごく落ち込みます。心も折れるし、違うって言いたくもなる。でも負けず嫌いなんです。頑張って這い上がってやるっていう性格だから、仕方ない。損なタイプですよね(笑)。ネットでいろんな書き込みをしている人には、まず一度ライブに来てくれと言いたい。私の歌を聞いてみろ、熱い心を感じてみろ。アニメの『マクロス』じゃないですけど、『私の歌を聞け!』っていう気持ちです!」
中川翔子に衝撃「アイドルなのに私みたい」
長門さんは、学生時代は学校のちょっとした有名人のポジションで、昔から人前で話すことは好きだった。また、モーニング娘。も大好き。それでも「アイドルはキラキラした人がなるもの」と自分とは別世界の存在としてとらえていた。その垣根を崩してくれたのが、“しょこたん”こと中川翔子だ。
「こういうアイドルがいるんだって衝撃を受けたんです。アイドルなのに、漫画とアニメが好き。アイドルなのに、私みたい。すげー!って。ブログを読んで、ライブにも行って、夢中になりました。まぁ、しょこたんのファンにも叩かれたんですけどね。しょこたんコミュニティの中で、冗談で『私のファンコミュニティも作ってほしいな』って言ったら、『ファンなのに目立ちすぎ』ってまた知らない人に叩かれました(笑)」
長門さんが今後の活動の上で注目しているのが“サブカル”だ。
「お世話になっている、大阪でお笑いやっている人から『お前はアイドルじゃない。サブカルだ』って褒められたんです。それを聞いて、これからはサブカルやな!と思って。サブカルと言われたのも、肩書を変えた理由として大きいです。アイドルじゃなくてサブカルだから、アニメの話も強いし、なんでも挑戦していくつもりです」
現在は、もっとファンを増やしてワンマンライブや生誕祭を実現させることを大目標にしながら、複数の仕事をかけもちして、活動費に充てている。夢を追う人間として、けっして若いとは言えない年齢になった。それでも長門さんはステージを諦めない。生活の中心が、ライブだ。
「ステージの楽しさは一度立ってみないとわかりませんよ。私はあがり症だし、毎回どんなライブになるのか、ドキドキします。お客様にどうやって楽しんでもらえるか、名前を覚えてもらえるか、心配なところはたくさんあります。でもステージに立った瞬間、楽しみが始まるんです。しかもライブごとに楽しみの形は違うんです。1歩踏み出さないとわからない、それがライブの魅力じゃないでしょうか」
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