プロデューサーにすべてを丸投げされてしまった3人組アイドル~元アイドルインタビュー第9回・前編~
毎日のように流れてくる、知らないアイドルの卒業発表ツイート。アイドルを辞めた女の子たちは今どこで何をしているんだろう?
ナルミ(仮名)さん、マリナ(仮名)さん、ホノカ(仮名)さんの3人は、ある3人組アイドルグループに在籍していた。しかし、プロデューサーに振り回され続けて、全員同時に脱退することになった。このインタビューを受けてくれた3人の目的は、地下アイドル界の実状を伝えること。これからアイドルを目指す人が同じようなトラブルに巻き込まれないようにと、真摯に語ってくれた。
プロデューサーとの距離が縮まらなかった理由
――プロデューサーさんは、具体的にどんな方だったんですか?
マリナ:自分の世界を持っているかわりに、私たちの話はあまり聞いてくれない方でした。サブカル系のアイドルヲタクで、B〇SとかB〇SHに影響を強く受けていました。もともと芸能とは無縁の仕事をしていた方なのですが、とあるアイドルプロデューサーさんが出した本を読んで、「自分もやってみたい!」とアイドルグループを作ったんです。
ホノカ:もともとがアイドル好きなので、ライブのときも私たちのことは放っておいて、客席でほかのアイドルさんをずっと観ていました。私たちにはLINEで「今日はMCでこれ喋って」とか指示してくるだけ。正直なところ、いろいろなことを丸投げにされていた印象です。話す機会もあまりなく、関係性はいつまで経っても深まらなかったです。
マリナ:メンバーへの愛や思いやりを一切感じられませんでした。B〇Sが好きな子なら誰でもよかったように感じることが多かったです。なので、こちらから距離を縮めていこうとは思えませんでした。
ナルミ:わたしもふたりと同じ印象ですね。練習に参加することもないので、顔を合わせるのはライブの日だけ。話をしたいと伝えたときも、その場で「どうぞ」となり、立ち話程度で終わりでした。そんな状況だったので、結局本当に言いたいことや深い話はできませんでした。こちらの話もあまり受け止めてくれなかったので、自然と話をすることはなくなりました。どんどんメンバーとプロデューサーの気持ちは離れていきましたね……。
すべてがムチャ振り「メンバーでどうにかして」
――どんなプロデュースをされていたんですか?
ナルミ:ほかのアイドルさんの真似がほとんどでした。メンバーの名前をカタカナでB〇SH風にしてみたり、「〇〇がこんなことしてたから、うちらでもやりたい!」みたいな感じでした。もはや趣味ですよね。
マリナ:あるライブで主催の方に挨拶したら、「プロデューサーさんに強く推されたから大トリにしたんだよ」と教えられました。そのとき私たちはまだライブを1回しかやったことなかったのに……。すごく申し訳ない気持ちになりますよね。全体的にムチャ振りが多かったです。
ホノカ:新人の私たちにはまだ早すぎるイベントに出ることが多かったんですよ。
ナルミ:それなのに曲も未完成なまま持ってきて「メンバーでどうにかして」って……。振り付けも歌割りも全部自分たちで考えて、スタジオ代を払ってくれないので、早朝に鏡のない公園で練習して……。その状況で、カバー曲を練習したり、月1くらいで新曲を渡されてもいたので、いっぱいいっぱいでした。
マリナ:でもライブ後に「動きがない」って言われちゃうんです。それならちゃんと練習を見て、そのときにアドバイスしてよって思うんですが、そこは放任主義でした。
ホノカ:こっちは自腹で衣装を買ったり、なんとか工夫しようとしているのに、「あれカッコ悪かった」と言われたりしていました。何もプロデュースしてくれないのに、そういうことを言われるのは本当につらかったです。
顔合わせの時点で「あ、ヤバイかも」
――最初に運営に対して違和感を覚えたのはいつですか?
ナルミ:加入時です(笑)。応募メールだけで加入が決まっちゃったんですよ。「歌とか聞かなくていいんですか?」って聞いても、「B〇Sが好きなら大丈夫」みたいな感じで。そこで集まったのが4人組の初期メンバーで、マリナもホノカもまだ加入していません。初顔合わせで曲と振り付けを渡されて、1ヵ月後、全体練習をほぼしていない状態だったのにライブに出させられました。当時のリーダーががんばってくれてなんとかなったんですけど、本当に大変でした。2ヵ月後、私ひとりになったとき、マリナとホノカが入ってきて3人組になりました。
マリナ:実は私、ナルミよりも先に加入が決まっていたんです。だけどそのときは、曲もグループ名も決まってなくて、方針も曖昧だし、なかなかメンバーも集まらないから、いったん断ったんです。その1、2年後に「遅くなったけど、ライブやるから観に来て」ってメールが届いたので行ってみたら、ナルミが出ていて。それで、ちゃんと形になったんだと思って加入しました。
ナルミ:私がムリしてがんばっていなければ、マリナも「形になった」って思わなかったのかも(笑)。
ホノカ:私はもともとソロで活動していたんですけど、3人で初顔合わせしたときに「あ、ヤバイかも」と思いました(笑)。プロデューサーと作曲家の人と、5人でカラオケに行ったんですが、私たちは初めて会うのに、大人たちが何もリードしないで黙っている。歌声をチェックしたいってことで1時間くらい3人で歌わされたあと、プロデューサーさんが「カラオケの料金は全員でワリカンにしよう」と言い出して、「あ、これは……」と(笑)。
ナルミ:ふたりが入る前はスタジオ代とかは運営費から出ていたんです。なのに3人になった瞬間、「メンバーもお金を払わないと責任感が出ない」という方針に変わってしまいました。
マリナ:私たちの収入源はチェキ(ツーショット写真)売上の一部だけだったので、ずっと赤字。交通費も出ないし、スタジオで練習するときもスタジオ代は自腹でした。
ファンに脱退報告できていない舞台裏
――そういえば、グループの公式Twitterではマリナさんしか脱退が発表されていません(取材当時)が、ナルミさんとホノカさんはまだ建前上は脱退されていないのですか?
ナルミ:私もホノカもちゃんと許可を取って辞めました。でも、一気に全員脱退しちゃうと、プロデューサーさんの評判が悪くなるからと、私とホノカはまだ在籍していることにされています。今は「2人組になって体勢を整えるために活動休止」という形にしているみたいです。私のTwitterアカウントも勝手に更新しちゃダメと言われているので、ファンの方々にまだ脱退を伝えられてないんです。それが本当に申し訳なくて……。
ホノカ:私のアカウントは、ソロ活動をしていたときから使っているものだからツイートしています。でも、まだ正式に脱退が発表されていないから、グループに関しては何も話せないんですよ。だから早く本当のことをファンの方に伝えたいです。
マリナ:私が先に脱退になったのは、プロデューサーさんに自分の意見を強気で伝えたからでしょうね。翌日には公式Twitterで脱退が発表されていました。でも脱退を自分のアカウントでも報告しようとしたら、「そのアカウントはグループで作ったものだから返してほしい。今ついているファンも精算して」と消されちゃったんです。
噛み合わない運営に振り回されていた時間を後悔する3人。後編(後日公開)では、これからアイドルを目指す人に向けてのアドバイスと、自分たちの今後について語ってくれた。
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