プロデューサーのパワハラに悩まされたご当地アイドル時代……“居眠り運転”で命の危機~元アイドルインタビュー第10回~

連載・コラム

[2018/11/7 17:00]

毎日のように流れてくる、知らないアイドルの卒業発表ツイート。アイドルを辞めた女の子たちは今どこで何をしているんだろう?

16歳のアイドルが自殺したニュースによって、アイドルの労働問題に世間の注目が集まっている。そんなとき、知らないメールアドレスから連絡があった。

「記事で取り上げてもらえれば、悪徳プロデューサーに引っかかる女の子を守り、搾取されるファンの人が減るのではと思い、メールさせていただきました」

メールの差出人・ハルコさん(仮名)は、近畿地方のあるご当地アイドルグループに所属していた過去の持ち主だった。

加入3ヵ月で不信感は完全なものに

画像はイメージです

現在は結婚して主婦になった24歳のハルコさんは、大学時代、ご当地アイドルグループで1年ほど活動していた。もともとアイドルが大好きで、中学生のときから48系グループやハロー!プロジェクトなどさまざまなオーディションを受けてきた。でも、なかなか合格を勝ち取れないまま19歳に。そんなとき見つけたのが、地元を拠点としたアイドルグループの募集だった。

「地元が好きだから、地元で活動できるなら嬉しいなと思って、これが人生最後のオーディションと決めて応募しました」

結果は見事合格。グループ加入にあたって、プロデューサーからは、「正規メンバーに昇格すれば交通費などが支給される。研究生の間は、ライブの裏方を手伝いながら、ステージデビューを目指す」「学業優先。就活で有利になるような活動にしようと思っている」「作詞作曲は有名クリエイターに依頼している」といった説明を受けた。

そういった条件に納得して加入を決めたところ、いきなり違和感を覚える出来事が発生……。衣装貸与と聞いていたはずが、なぜか衣装代として3万円を請求されたのだ。プロデューサーには、「今後衣装を増やすための資金」という釈然としない理由を説明された。

「そこで少し不安を覚えたんですが、アイドルになりたい気持ちが勝ったんですよね……。研究生になってから3ヵ月目に正規メンバーになったんですが、交通費は自己負担のままで、プロデューサーに質問したら、『言ってなかったっけ? 選抜にならないと交通費も給料もないよ』と返されました。それまでも『メンバー間でのLINE交換禁止』や『プロデューサーに対する要望は禁止』などのルールを言いつけられて、不信感を覚えてはいたんですが、そこで完全に『うちの運営はおかしい』と思うようになりました」

グループに加入してすぐ運営を信じられなくなったハルコさん。それでも活動をしばらく続けたのは、「アイドルになりたかったという自分の夢もですが、ファンの人の期待に応えたかったから」だと教えてくれた。

まるで犯罪者扱いだった脱退発表

プロデューサーは金銭面以外でも不誠実……というより、ハルコさんいわく、「すごく勝手で、思慮も洞察力もお金も何もかもない最低な人」だったらしい。

「体が大きくて少し顔は怖いけど、人当たりがよかったので、第一印象としては、『この人は夢を持ってアイドル運営をしているんだな』とけっして悪いものではありませんでした。でもグループに加入してからは、プロデューサーの中でのルールに少しでも反すると、『お前はこんなことをして責任がとれるのか! 訴えるぞ!』とすごく怖いトーンで叱責されました。でもイベンターさんやスポンサーさんの前ではニコニコしているから、すごくいい人に見えるんです」

理不尽な恫喝に加え、メンバーを悩ませたのが、“プロデューサーの運転”だった。移動車の運転を担当するわりに、スピード違反や居眠り運転などの交通違反を繰り返した。また、メンバーたちに「温泉に連れて行ってやるから生理になるなよ」といったセクハラ発言をぶつけてきたり、気に食わないファンに対しても、Twitterの裏アカウントから中傷したり、悪い噂を流したり……。しかも、メンバーのひとりと内緒で交際していることが発覚。ある仕事で、プロデューサーから突然「自分は同席できなくなった」と連絡があった。その後、仕事を欠席していたメンバーが更新したブログをたまたまチェックしたら、プライベートで遊びに行ったという写真にプロデューサーが写り込んでいたそうだ。

「ふたりの関係を知ってからは、『どうやってこのグループを辞めようか、でもファンの人もいるし……』とほかのメンバーたちと悩む日々でした」

ストレスのあまり、ハルコさんの体重は一時38kgまで落ちてしまった。結局、複数のメンバーで一斉に辞めることになったのだが、公式サイトの脱退発表では、まるでハルコさんが運営に対して犯罪行為を働いたかのような書き方がされていた。プロデューサーにもひるまず意見を伝えていったハルコさんは、前々からとくに厳しく当たられていたという。

「1回もレッスンさせてもらっていない楽曲なのに当日いきなりライブに出るように命令されたり、人気投票企画で明らかに私のポイントが不正に下げられていたり、もともと冷遇されてはいました。あとメンバー同士で『いつかみんなで辞めるとき武器にしよう』とプロデューサーのDMとか裏アカウントでのツイートのスクショを共有していたのが、プロデューサー本人にバレちゃったんです。ほかのメンバーが裏切って、私に全部の責任が押し付けられたのが、嫌われるとどめになったんでしょうね」

でも、脱退発表を読んだ人はハルコさんのことを誤解してしまいかねない。……もちろん外野が簡単に言えることではないけれど、プロデューサーを訴えることなどは考えなかったのだろうか?

「とにかくもう関わりたくない!っていう気持ちが一番でした。あとプロデューサーが本当に怖かった。いまだにプロデューサーみたいな体格の人を見かけると、体がビクッとなってしまいます」

なお、ハルコさんが所属していたアイドルグループは現在も活動を続けており、新規メンバーの募集もしている。


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所属していたグループの規模は問わず、また匿名・顔出しなしの出演で構いません。ご興味のある方はこちらまでお気軽にご連絡ください。

[取材・文 / アイドルライター原田イチボ@HEW]