「オレオレ詐欺と喋ってみよう!(後編)」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)の『炎上くらいしてみたい』

連載・コラム

[2017/9/1 17:00]

1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載! この人……ホントにキックボクシングの元日本チャンピオン!?


オレオレ詐欺の被害に合いかけている友人から依頼され、犯人とおぼしき“自称・保険屋”に電話をした俺。今回は後編です。
(前編はコチラ

「車両の修理代が用意できなければ、お兄さんを逮捕する事になりますね。仕方がないですが」というオレオレ詐欺君。そこで「わかりました。ではお金を用意しましょう。おいくらですか?」と返すと「300万円ですね」と少し嬉しそうなトーンの答え。

俺「300万? 高すぎですね。お兄さんの会社の車ってADバンですよね? 新車買ったって300万円もしないですよ」

オレ「特別仕様なんですかね。TOYOTAからそういう見積もりが出てます」

TOYOTAかよ! ADバンは日産の車なのに、TOYOTAに修理見積もり出させるとかおかしいだろ。もちろん他メーカーに修理依頼するケースはあるのでしょうが、一括購入やリースで車両を手配する会社であればそれは考えにくい。っていうか友達のお兄さんが会社で使っている車種が何かなんて、俺はそもそも知らないのです。

俺「どっちにしても今300万円は用意できないですよ。かき集めて200万円ですかね」

オレ「それだとお兄さん、逮捕されますがよろしいですか?」

俺「逮捕ですか……それは困ります。でも……仕方ないですね。いいです、もう逮捕でいいです!」

オレ「え……?」

オレオレ詐欺君はちょっと黙り込んでしまった。俺のことを「ヒドい奴だ」と思ったのかもしれません。いや、実際ヒドい奴だと思います。「代理の者」のくせに、100万円足りないだけで友達のお兄さんを「逮捕しちゃっていいです」と悪びれもせずに言うのですから。他人事とはまさにこのことです。

オレ「うーん、200万なら用意できるんですか?」

俺「そうですね。できるかもしれません」

俺「でも……やっぱり払えるのは150万です!」

オレ「200万円なら用意できるって言ったでしょ!」

俺「あの、実は僕、整形したいんです。だから50万円はその費用にします!」

俺は思い切って整形願望をオレオレ詐欺君に打ち明けてみました。

オレ「じゃあ、もうお兄さんは逮捕しますよ? いいですか?」

俺「はい。お兄さんは逮捕してください。その代わり僕は整形します! いいですか?」

俺は高らかに整形を宣言するとともに、日本人ならではの奥ゆかしさを発揮し、整形の許可をオレオレ詐欺君に求めました。

オレ「あー、もういいから今日中に150万円を振り込んでください」

なんと! オレオレ詐欺君は俺の整形を認めてくれました! 自分たちの取り分が50万円減ったとしても、俺に整形をさせてくれる。この人はなんて優しい人なんだ……一瞬そう思いましたが違います。こいつはやっぱり詐欺師です。

俺「あ、そういえばお宅様はどこの保険会社さんなんですか?」

オレ「◯◯◯◯損保です。」

俺「◯◯◯◯損保のどこの営業所になるんでしょうか?」

オレ「×××ですよ」

電話を頬と肩で挟み、話しながらパソコンで検索してみると確かにその営業所は実在しました。

「こういうところは抜かりがないんだなぁ」と感心しましたが、それだけじゃつまらない。

俺「ではお金が用意できたら営業所に持参しますね。夕方になってしまいますが」

オレ「いや、振り込んでください。自分は仕事で戻れないので」

俺「えー! そんなぁ。整形の相談もしたいし、お礼も直接言いたいです!」

何のお礼を言うのかは俺もまったくわからないが、これはノリだ。俺とオレのセッションなのです。そもそも向こうがありもしないことを言ってきてるのだから、こちらもテキトーで構わない。お互いに虚実の内容だけをキャッチボールする、世界で一番不毛な時間を過ごしている自覚がジワジワと沸き上ります。

ここらで終わりにしよう。俺はそう決めました。

俺「もうちょっと上手くやってほしかったなぁ」

オレ「え? んあぁ?」

俺「いや、詐欺をやるんだったら、もっと頭の回転が早くないとダメだと思うんだよね」

オレ「お前何なんだ! テメェ警察か?警察だな!」

俺「いやいや、どう考えたって違うでしょ。でも警察はもう君のすぐそばにいるよ」

俺「話に付き合ってくれてありがとう。おかげで君の場所が探知できたそうだよ。今から警官が踏み込むってさ」

この言葉を聞いたオレオレ詐欺君、何やらワメキながら慌てて電話を切ってしまいました。

もちろん警察がオレオレ詐欺君の携帯を探知したなんてのはデタラメで、俺は自分のレーベルの事務所から電話していただけです。もし彼らに会えるものなら会ってみたかったんですけどね。

その後、この件を依頼してきた友人に電話をかけ「お兄さん、結局逮捕されちゃった。ごめん、懲役20年だってさ」と軽くジャブをかましてから、「あれはやっぱりオレオレ詐欺だったよ」と伝え、警察に通報するよう言いました。

実はこの話、小さな後日談もあるのですがそれはまた次回にでも。

こんなような話がいくつかあるんだけど、まだ聞く?

【著者紹介】

タケムラアキラ(竹村哲)●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。

[タケムラ アキラ]