「オレオレ詐欺と喋ってみよう・後日談」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)の『炎上くらいしてみたい』

連載・コラム

[2017/9/15 17:30]

1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載! この人……ホントにキックボクシングの元日本チャンピオン!?


前回で「オレオレ詐欺と喋ってみよう」は一応完結をみたわけですが、決着がついてからもちょっとした後日談が。

俺とオレの一騎討ちがあった頃は、ニッポン放送で『オールナイトニッポンいいネ!』という生放送(毎週水曜22~24時)のラジオ番組をやっていました。一騎打ちをしたその日も番組の生放送があったため、本番の1~2時間前にはニッポン放送に入り、この後に始まる番組の打ち合わせをスタート。

その日にやること(番組内容)はあらかじめほぼ決まっているのですが、「それおもしろいじゃん!」となると融通が効きまくるのがラジオ、というかオールナイトニッポンという俺の認識。もちろん、担当してくれるスタッフによって差はあるのでしょうが、俺が『いいネ!』の前にパーソナリティをやっていた『オールナイトニッポン.com』(深夜25~27時)にはそんなノリがありました。

夜22~24時の『いいネ!』に移ってからはそこまでの融通さはみられずでしたが、それでも『オールナイトニッポン』。たまには無軌道なこともやってみたい、そんな冒険心が俺にはあったのでしょう。

「実は今日の昼間にですね……」と番組のスタッフにオレオレ詐欺とのやり取りを説明し、この話を今日のフリートークでしたいと提案。スタッフのみんなもとてもおもしろがって聞いてくれていたので、俺は「こりゃイケルな!」と思い、本当のやりたいことを告げてみました。

俺「で、オレオレ詐欺との一連をフリートークをしたあとにさ」

ディレクター「うんうん!」

構成作家「それに引っ掛けてメール募集します?」

俺「募集するのは全然いいんだけど、俺のやりたいのは……」

ディレクター「うんうん」

俺「オレオレ詐欺に電話しようよ!」

ディレクター「うんうん……えっ!?!?」

俺「いや、だからさ」

ディレクター「竹村さん……」

俺「オレオレ詐欺の携帯番号、ほらコレがあるから」

ディレクター「無理ですよ……」

構成作家「んー、そうきたか」

なーんーでーー!! 当時すでに30代前半という大人でなければいけない年齢だったにもかかわらず、後先をまったく考えていない俺は「オレオレ詐欺とラジオの生放送でやり合う」という無茶苦茶な企画をとんでもなく素晴らしいアイデアとして本番前に提案したようです。

もともとラジオ(というかニッポン放送)のヘビーリスナーとして過ごしてきた中学生時代、もしその頃の俺が「自分が聴いているラジオ番組で、そのパーソナリティが突如オレオレ詐欺と電話でガチのやり取りをし始める」そんな番組に遭遇したら文字どおりかじりついて聴いてしまう。それを聴いたリスナーの高揚感を想像するだけで「こりゃ、やるしかないでしょ!」とイキり立っての提案だった。

現在なら世の流れとして、そんな内容は絶対にオンエアできないのはわかる。しかし20年前ならおそらくオンエアできたのではと思うし、14~15年前の当時でも局、時間帯、担当スタッフによっては何とかなったかもしれない。そんな思いもいまだに残ってはいます。

というのもこのときの担当ディレクターさん、いい人ではあったが俺が番組内のトークで「キャバクラに行ってみたとき」の話しをしたら「竹村さんが“キャバクラ”なんて言っちゃ(行っちゃ?)ダメですよ。イメージがあるんですから」と素で言われて、「俺はいつからそんな純粋なキャラになったんだ……?」とひっくり返りそうになった覚えがあります。

だから余計に「もうちょっとラフなディレクターさんだったら、イケたのかなぁ」と思ってしまうのでしょうか。今であればYouTuberデビューでもしてその企画をやったのでしょうが、当時の俺にそんな概念はありませんでした。

結局、番組内ではオレオレ詐欺にまったく触れるコトなく、通常どおりに進行した気がします。今思うと「クビになってもいいから、あの企画やってみたかったなぁ」と思いますが、問題になったときクビになるのは俺だけじゃないですからね。

あのコトを思い出すたびに「何が正解だったんだろ」といまだに自問自答している46歳です。

【著者紹介】

タケムラアキラ(竹村哲)●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。

タケムラアキラ

竹村哲●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。