「スッマホ、ひき逃げされるの巻」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)の『炎上くらいしてみたい』

連載・コラム

[2017/11/3 11:30]

1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載! この人……ホントにキックボクシングの元日本チャンピオン!?


いやー、前回、前々回と安室ちゃんとの思い出話しを超スピードで書いた反動で、今回の原稿がすっかり遅くなったタケムラです。

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俺スマホに替えてからまだ2年なんだけど、ついにやっちゃったよアレ。そう、多くのスマホユーザーが通る道「画面バッキバキ」ってやつ。たださ、普通画面を割っちゃう人って「スマホを落として」ってのがほとんどだよね。平たく言えば俺も落としたっちゃあ落としたんだけど、そこでは割れなかったんだ。状況はこう。

肌寒くなった最近、シャカシャカしたアウトドアジャケットを羽織ってロードバイクに乗ってたんだ。ファスナー付きの胸ポケットにスマホを入れていたんだけど、どうやら閉めたはずのファスナーが半開きになっていたようで、そこからスマホが車道へダイブ。ここ10年ほどはどこのライブシーンも「ダイブ禁止」が言いわたされて久しいが、そんなのお構いなしと言わんばかりのパンクキッズ顔負けの立派なダイブ。

アスファルトに落下したときにそこそこの音がしたので「やべっ! 割れたか!?」と思って停まりながら落ちたスマホを見やると、幸いにも画面は無事。「お~、良かった良かった」と俺はひと安心。ロードバイクを降りて取りに行こうとしたらさ、来たんだよ……。

デカいトラックが……。

「あぁぁぁああ!」と思わず声が出たよね、俺ひとりだったけど。多分そこそこ大きい声だったと思うけど、どうだろう。いや、ほら、俺もスネイルが活動休止になって早2年ちょい。まったく歌ってないから前ほどは声も出てないかもと、ふと思ってさ。ただ俺は地声がデカい。昔みんなと「すげえデカい声出そうぜコンテスト」を海でやって遊んだとき、俺が「うぉーい!!」って叫んだら海面でボラが20~30匹飛び跳ねたからね(ボラは習性としてデカい音にビビって飛び跳ねる)。

そう考えると、喉の調子さえ良ければグアムあたりの人まで届くんじゃないかな、俺の声、そして俺の歌(←キモい)。

で、トラックだよ。当然トラックの運転手は落ちている俺のスマホにはまるで気づかない。そのスマホの上を「ブォォオオン」と通るよね、そりゃ。

このとき俺は、もう声すらあげなかった。落とした俺が悪いんだもん。嘆きたい気持ちはあるが、そんなことをしてもスマホが直るわけじゃないし、いつまでもクヨクヨするほうが人生にとってはマイナスだ。瞬時に心の整理をつけて、一瞬のうちにスマホを諦めることができた。

スマホの上を通りすぎるトラック。そして走り去るトラックのうしろ姿を虚無の眼差しで見送りつつ、トラックに踏み潰されたスマホを回収しようと1~2歩踏み出して俺は驚愕。

なんと!偶然にもタイヤの間をすり抜けたようで俺のスッマホは無傷だったんだ!

このときの興奮といったら今思い出してもそこそこのモンで、何日も経った今でもその興奮からスマホをスッマホと打ち間違えるほどだ。

とにかく俺のかわいいスッマホは無事だった。タイヤという死線をまさにくぐり抜け、生き残った俺のスッマホ。

俺は子どもの頃に醤油1リットルを亀戸エルナードの福引きで当てて以来、ラッキーさには自信があったが、まさかこういう形での幸運を発揮できるとは思わなかった。

「やっぱ俺はツイてるんだな」

そういう過度な自己満足感に浸りつつスッマホを拾いに向かったとき、俺は気づいた。

「もう1台、デカいトラックが来る!」

「つかあれダンプじゃん!!」

ダッシュでスマホを拾いに行くのか行かぬのか、猛然と回転し始める俺の脳。ダンプの速度とスマホまでの距離、俺のダッシュ力とスマホを拾い上げ瞬時に身を翻し、安全な位置に戻るまでの所要タイム。この緊迫した場面では「スッマホ」などと打ってはいられない。

よし、やめ!!

スッマホ、ごめん!!

俺は瞬時に諦めたAgain。そして虚無の眼差しで落ちたスッマホに迫り来るダンプを見つめたAgain。その瞬間はスローモーションだった。

パッ……

キッ……。

ダンプのドライバーはベテランだったのか、上手に俺のスッマホを踏んづけていった。液晶画面がバリッバリになっているのは遠目でもわかる。そして周囲の安全を確認してから俺はスッマホを拾い上げに行った。

2017年10月27日 俺のスッマホ、死亡。

【著者紹介】

タケムラアキラ(竹村哲)●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。

[タケムラ アキラ]