「安室奈美恵と俺・後編」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)の『炎上くらいしてみたい』
1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載! この人……ホントにキックボクシングの元日本チャンピオン!?
俺「あのさ……沖縄出身でしたよね。東京で暮らしながらも、こっちで沖縄料理を食べに行ったりすることもあるの?」
安室ちゃん「ときどきありますよー。竹村さんは沖縄料理食べますか?」
俺「大好き! 親父が転勤で浦添にいたこともあるので馴染みもあるし、こっちだと千葉の南行徳にある沖縄料理屋にちょこちょこ行くんだ」
安室ちゃん「へー(ちょっと笑顔)」
俺「そこは朝方までやってるから深夜のスケジュール終わりで寄ったりもできるし、明け方になってくると近くで飲んでた沖縄の人たちが座敷にごろ寝しに来たりしてさ! 最後はお店の人もゴロゴロし出す店。ラフだからこっちもラクだし、美味しいからつい行っちゃうんだ」
安室ちゃん「美味しいトコいいなぁ」
そう言い、軽く「ふふふっ」と笑いながら……
とても可愛らしい笑みを浮かべながら!!
ちょっと小声になって、
「今度、連れて行ってください♪」
と言ったんだ、オリャァァァァア!!!グァァァッテェェェム!!! バンドやってて良かったぜ!音楽最高! ありがとう!オールナイトニッポン!
いやいやいや、もちろんわかっておりますよ? 俺もいい歳したおっさんで、世の中の酸いも甘いもそれなりに味わってきたつもりです。なのでそれが社交辞令だというのは、わざわっざ教えていただかなくとも結構でございます。百も承知どころか六百弱は承知です。
でもさ、言われてみ? あの安室奈美恵にだよ? デスクを挟んだたかだか70~80センチの距離から!
「今度、連れて行ってください♪」
って! しかもイタズラっぽく笑いながらだかんな! もうね、危うく落ちちゃうトコだった。え?恋だよ恋! 恥ずかしいだろ、言わせんな!
でもね、思ったよ。世に美人や可愛い人なんてのはザラにいる。それに才能がプラスされた人が表現者として人前に出てくるけど、ほとんどの人が知られることのないまま消えていく。
そんななかで安室ちゃんのようにあれだけの存在になれるってのは、周囲の人を惹き込んでいくとてつもないリアルな魅力があるんだよ。安室ちゃんのそれはマジでヤバかった……。仕事上でそれなりに色んな女性と会った経験はあるけど「超ド級」。それが安室奈美恵さんでした。
ちなみにその後にゲストパートを収録したんだけど、その記憶がまったくないのよ。何話したんだか、ぜ〜んぜん覚えていない。でも、これまたなぜか収録後からは覚えてる。
録り終わって「お疲れさまでした〜」と帰っていく安室ちゃんとマネージャーさん。「ふぅ、なんとか終えた」と椅子の背にもたれかかると、目の前のデスク上には水が。
安室ちゃんがちょっとだけ飲み、そのまま置いていったミネラルウォーターのボトルだ。
「こ、これは……あ、あ、安室ちゃんの……」
ボトルに対し、俺の凝視パワーが炸裂し始めたそのとき! バンッ!とブースの扉が勢いよく開いたかと思うと、ダッシュで引き返してきた安室ちゃんのマネージャーが飛び込んできた。そしてシュタッ!とその飲みかけボトルをつかむと「お疲れっした〜!」とまた走って出ていった。
俺は番組スタッフに「ああいう管理もしないといけないんだねぇ。確かにボトルをとっちゃう奴もいるだろうしね。ははははは」と、ビッチリ冷や汗をかきながらも、白々しい乾いたうす笑いを浮かべるしかなかった。
蛇足ではありますが、それからずいぶんと年月が経ったある日。ある局でラジオ番組の特番をやらせてもらい、そこにアパレルブランドに勤める女性がゲストに来たんです。とても魅力的で自然に仲良くなり、その後一緒にご飯を食べたりもしました。「連れて行って下さい♪」とかまったく言われなかったけど。
それが今のかみさんです。人生は不思議。
番組で知り合った人と結婚するなんて、想像すらしていなかったわ。そして思い出の沖縄料理屋、あそこまだあんのかなー。懐かしい。ラジオの話でもあったし、最後に安室ちゃんの曲を聴いてもらおうかな。彼女の曲ではコレが一番好き。
【著者紹介】
タケムラアキラ(竹村哲)●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。