「俺、この勢いでラッパーになる」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)の『炎上くらいしてみたい』
1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載! この人……ホントにキックボクシングの元日本チャンピオン!?
最近は「犯罪を犯している人と喋ってみよう」シリーズをお送りしているこのコラム。まだ書くコトはあるのだが、あまりに続いたのもあるし息抜きに今回はフリー、完全ノープランで書くかね。「うちの仕事で息抜きしてんじゃねーよ」と言う『耳マン』編集部のもっともな意見には、今回も耳を貸しません。
始まったねー、平昌オリンピック。「平昌」つったって「ひらまさ」じゃねーからな。などとエラソーに言っても俺はオリンピック、特に冬季オリンピックにはまったく見識はなく、ニュースでやるようなダイジェストを観て「おー、スゴいね」と感心するような五輪素人。素人っていうか五輪に出たことがないのだから五輪童貞と言っていいし、それが事実だ。物事はハッキリと言わねばならぬ。
童貞などと書いていると「五輪に出たコトがない、っていうか五輪に出したコトがないってことだよね」という自問自答も入るが、この原稿を書いている俺は46歳で今は朝の7時。いい歳をした大人が爽やかな朝に書くレベルの低い下ネタほど、自己嫌悪に陥るモノもない。
そもそも「俺の人生、こんなんで良かったのかなー?」と思うこともしばしばあるが、今はただ、このコラムをうちの老いた両親が読まないことだけを祈る。
それにしても、俺は何ともいい加減な人生を送ってきた。
それなりの期間「SNAIL RAMP」というバンドをやっていたのだが、バンドなんてものをやること自体、その際たるモノでもあろう。考えてもみてほしい。その辺の得体の知れない20代の若者が、急にポエムを書く。そのひとりよがりなポエムに自作のあやふやなメロディをつけたと思ったら、人前で歌いだすんだ。しかも有料で。なにそれ。「チケットノルマが20枚あるんだよ。ね?ね?」とか言われたって知るかよ。お前が好きでやってんだろーが。こんなの完全にヤバいやつでしょ。絶対に目を合わせちゃダメなヤツでしょ。
しかもよくわからない歌が終わり、会場の片隅にある小さなテーブルを見ると、その上には自作のCDまであるんだ。で、また売りつけてくんのよ! 歌の合間には「物販持ってきてるんで、チェックしてってください」とか言っちゃって。気持ち悪い。売る気マンマンじゃねーか。第1な、「名前だけでも覚えて帰ってください」とか言うくらいなら、その読みづらいロゴはやめろ。「デザイン性が……」とか言ってんじゃねえ。明日からバンド名は全部平仮名にしろ。「すねいるらんぷ」、絶対読めるわ。「たけむらあきら よんじゅうろくさい」、薄気味悪いわ。
とにかくこの調子で、俺はいい加減に生きてきてしまった。
実は数日前、1本の電話がかかってきた。
「平昌オリンピック開幕に合わせて番組をやります」「司会がひとりいるので、竹村さんは解説的な感じで入ってくれませんか?」とのオファー。
このコラムの冒頭に書いたが、俺にオリンピックの解説ができるような知識はまったくない。
「参ったな」
そう思った俺は当然に答えた。
「いいですよ」
もう一度言うが俺にオリンピック、そして冬季オリンピック競技に関する知識はない。その男がオリンピック番組の解説を引き受ける。
いい加減な人生を送ってきた男だからこそなせる技「ザ・安請け合い」。
そんな番組引き受けて大丈夫なの?って、みんな俺にきくんだよ。
そういうヤツは俺の脚を見てみろ。
ガクガクに震えてるよ!!
【著者紹介】
タケムラアキラ(竹村哲)●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。