「嘘、嘘、嘘」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)の『炎上くらいしてみたい』
1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載! この人……ホントにキックボクシングの元日本チャンピオン!?
このコラム原稿がアップされるのはおそらくエイプリルフールあたりだと思うんだけど、最近、エイプリルフールでウソをつく人っているのかね。ネットがここまで浸透したお陰で、企業がPRを兼ねて冗談としてウソをつくパターンは随分と増えた気はするけど、個人としてはどうなんだろ。
個人でウソをついて楽しむ人って、大人になってからの記憶、少なくともここ10年間ほどには全然いないなー。もしかしたらウソついている人もいたかも知れないけど、それはエイプリルフールとも関係ない単なる虚言か、記憶にも残ってないようなクソつまらないウソだったんだと思う。
それに引き換え、子供の頃はウソが満ちあふれていた。小学生の頃は「50メートルを5.5秒で走ったことがある」という言う奴がいたし、中学では「私、翼くんと付き合ってる」と言いだす女子がいて、「誰? 他の中学の男?」と聞いたら「ううん。キャプテン翼の」と言われ、何のリアクションも取れなかった苦い思い出もある。
あ!あと小学1年生のときに、クラスでもちょっと浮いた存在の女の子がいて、その子は「宇宙人」と呼ばれていたんだ。そんな彼女がある日「私のママ、デザイナーなんだ」と突然言い出し、「おまえ、ウソ言うな!」とクラス中から総攻撃をくらったが、のちに事実と判明したこともあった。
その同じクラスには八百屋の息子がいてさ。たまにモメ事があると「うるせー、八百屋!」となじられていたんだが、その度に「違う!うちはフルーツショップだ!」と言い張ってたな。完全に八百屋だったけど。
そんなウソの思い出のなか、いまだに鮮明に覚えている話がある。小学2年生のとき、宮田という友達と仲が良かった。ある日、宮田の家で遊んでいると、そこには拳銃のモデルガンがあって、握るグリップ部分にはガムテープがぐるぐる巻きにされていた。
俺「壊れたの?」
宮田「あ……それは。ちょっとね」
竹「え?何? どうしたの?」
「いや、これは内緒だから」
竹「何で!教えてよ! 誰にも言わないって!」
宮「絶対言うなよ?」
そう、俺はこの事は誰にも言ってない。これからネット上に書くだけだ。
宮「本当に言うなよ? これ……本物の銃なんだ」
竹「……!!!!」
宮「俺のお爺ちゃんが戦争で使ってたやつ」
竹「これ……本物?」
宮「そう。すごい重いだろ?」
竹「うん、重い!」
宮「これを使ってお爺ちゃんは……」
竹「ゴクリ」
宮「ヘルメットをかぶっていなかった見張りのアメリカ兵に、後ろから近づき」
竹「うん」
宮「このグリップのとこで殴りつけたんだ!」
竹「うわぁ、映画みたい!」
映画みたいなモンですわな、妄想の世界ですから。
宮「でも敵は倒れなかった」
竹「え!何で?」
宮「敵はヘルメットの上にカツラをかぶっていたんだ!」
竹「うっわー、ずっり~!」
ズルいのはこんな作り話をする宮田だ。
宮「で、アメリカ兵は振り向きざまにお爺ちゃんにバン!バン!バン!」
竹「お爺ちゃん……(涙)」
宮「でもお爺ちゃんは飛び上がってよけたんだ!」
竹「飛んだの⁉︎」
宮「そう。10メートル」
竹「10メートル!!」
竹「お爺ちゃん、すごいね」
宮「そう、お爺ちゃんはすごい」
宮「で、飛び上がって上から敵を撃ったんだ」
竹「で、敵は?」
宮「やっつけた」
竹「お爺ちゃん、強い」
宮「そう、強い」
信じられないかもしれないが、小学2年だった俺はこの話を長いことずっと信じていた。そしていまだにこの作り話を超えるウソに出会ってない。
7歳で出会った宮田とはその後も随分遊んでいたが、やはりあれが最高のウソだった。でも今日はみんなにウソみたいな話しをひとつ言おうか?
俺、今年で47になるんだけど今も宮田と遊んでんだぜ。
【著者紹介】
タケムラアキラ(竹村哲)●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。