「SNAIL RAMPの作り方⑥:ヤバい女」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』

連載・コラム

[2018/7/4 11:30]

1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!


高円寺STUDIO DOMでのメンバー選考セッションのなかで、一番印象に残っているのはある女だ。

SNAIL RAMPとなりゆくこのバンドに、女性とやるイメージ自体がなかったため、「応募してくるのは男」と勝手に決めつけていた。しかしDOLLに掲載したメンバー募集の告知をみて、応募してきた女がいた。この文を読み、「おいタケムラ、女じゃなくて女性だろ?失礼だな」と感じる人もいると思う。でも、応募してきたこの人は「女」という表現がピッタリだったし、何より、かけてきた電話の開口一番が「女なんだけどいい?」だったし。

その声は何だか気だるく、面倒くさそうな声だった。「え! だったらかけてこなきゃいいのに!」と言いたくなるほど、「バンドなんかやりたくないんだけど」感に満ちあふれた声だった。そして「好きなバンドはどういうの?」との質問には、なんだか知らない怖そうな名前のバンドを挙げてきた。俺が無知だったに過ぎないのだろうが、自分のマニアックさを前面に出したいがため、もしくは「あー、あのバンドね」と言われたくないがために存在しないバンド名を自作して口走ってしまった高校の同級生・N君を思い出した。

電話での会話はとにかく噛み合わず、「まいったなぁ。断ろうか」と思ったときに気づいた。「この人、なんのパートなんだろう」。そう、俺は彼女の特異な雰囲気に飲まれてしまい、希望パートを聞いていなかった。

「パートはなんなの?」

「あたし? ドラムだよ」

「あなたと話しているんだから、あなたのパートでしょうよ!」とかぶせたくなる欲求が湧き上がるとともに、「俺? タケムラだよ」ばりに自然な「あたし?ドラムだよ」と発言した彼女に、俄然興味が湧いてきた。

初回の電話でそのままスタジオの約束を取りつけ、セッション当日に高円寺のSTUDIO DOMに向かった。スタジオ内で準備していると、ひとりの女が入ってきた。

「絶対に君、ドラムだよね」

失礼を承知でそう言いたくなる体躯を持つ彼女。身長は160センチほどであろうか、体重は恐らく80キロ前後。全身黒ずくめのファッションだった。

彼女は口数も少なにセッティングを始め、ドラムを叩き始めた。醸し出すその雰囲気に反し、ドラムは意外にオーソドックスであり、うまくもなくヘタでもなかった。ホント普通。

ただ俺は見逃さなかった。それは彼女がそばに置いていた携帯電話。当時は携帯を持っているだけで珍しい時代で、「携帯を街なかで使う」という行為は、例えるなら「街なかを竹馬で移動する」くらいの注目度を浴びる時代。携帯を持っているだけで貴重な存在だったそんな時代に、彼女は3台もの携帯電話を持っていた……。そしてちょいちょい来る着信には、そのたびに演奏を止めてスタジオ外に出て行き、なにやら話していた。

スタジオ内に残された俺たちは明かなキナ臭さを彼女に感じてはいたが、「なんの電話?」とは、誰ひとりとしてきかなかったし、きけなかった。やがてスタジオの時間も終了し、それぞれが片付けを始めているなかで、彼女が「このあと、どうすんの? 飲みに行く?」と俺に話しかけてきた。

これ以上彼女に関わらないほうがいいと感じた俺は、「このあと、まだ別の人たちとも会うから」と理由をつけて咄嗟に断った。

彼女はおそらく薬の売人だったんだよね。当時のPUNKSは普通のバイトに雇ってもらえないことも多く、必然的に非合法な働き手として重用されていく傾向があった。彼女もそんなひとりだったんだと思う。

ただ俺は薬絡みの人間とバンドをやるつもりはなかったので、数日後、彼女にお断りの電話を入れた。「今回はナシということで」と説明する俺に、相変わらず面倒くさそうに「うん、わかったー」と抑揚なく彼女は答えた。

一連のメンバー選考セッションで、SNAIL RAMPの結成メンバーである太郎(ギター)と拓郎(ドラム)とも知り合うわけだが、一番印象が残っているのが彼女というのは、なんとも複雑な気分だ。

タケムラアキラ

竹村哲●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。