「SNAIL RAMPの作り方7:ついに決まったメンバー」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』
1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!
結局、SNAIL RAMPとなるバンドのメンバー探しセッションは、何日間やったのだろうか。よくは覚えていないが、飛び飛びのスケジュールも合わせれば4日~5日間くらいやったのかもしれない。
結果、ギターに太郎、ドラムには拓郎という第1期メンバーが集まった。拓郎は、口数こそ少ないが男前のナイスガイ、そしてちょっぴり皮肉屋だった。当時俺は自分の才能のなさを棚に上げ、「なんであんなのが売れてるのかなー」などと人気のあるアーティストたちに嫉妬し、ボヤいたりもしていた。
そうすると拓郎が「あれは売れてるとは言っても、あいつのファンでいればカッコイイと勘違いしている奴らが取り巻いているだけですよ」などと、口元にちょっと意地悪な笑みを含みながら俺の溜飲(りゅういん)を下げてくれるコメントを発していた。
そしてギターの太郎。俺は彼と初めて会った瞬間のことをいまだに覚えている。渋谷のモヤイ像で待ち合わせ、渋谷ペンタでスタジオに入ったのだが、初めましての挨拶をした2秒後には、いきなり女の子の相談をされた。
「そんなこと、初めて会った俺に相談するぅぅう?」というような内容だったし、その日、太郎はライダースの下にネルシャツを着ていて、その裾がアンバランスなほど長く垂れ下がり、広がっていた。ちょうど、裾の広がったAラインのワンピースのようなシルエットだったのだが、246を横ぎる歩道橋を歩く太郎をうしろから見ながら、「あの子、なんだかイカみたいだなぁ」と思ったのを鮮明に覚えている。
これでギター太郎、ベース竹村、ドラム拓郎と3人集まったのだが、肝心のボーカルがいなかった。メンバー選考のセッションにも当然何人かのボーカル候補はいたのだが、ピンとくる人間は残念ながら見つけられなかった。
ボーカルを探してから活動を始めてもよかったが、楽器陣はいるわけだから曲を作りながらボーカルを探してもいいんじゃない?とふたりから言われ、それもそうだなと3人でリハを重ね始めた。最初に作ったのは『SHE’S SO NICE』という曲だった。この曲が良いんだか悪いんだかまったくわからなかったが、取りあえず完成させてみた。とにかく曲を溜めないことにはライブもできないのだ。
そして2曲目に作ったのが『A PIZZA ALREADY』。俺が曲を作るときはギターを使うのだが、何ぶんにもヘタクソで、ジャーンとコードを鳴らすか超単純なフレーズしか弾けない。もともとOPERATION IVYというバンドも好きだったのだが、彼らの曲にも非常に単純なイントロで始まる曲がある。音楽好きな人のなかには「単純」や「ヘタクソ」を小馬鹿にする人もいるが、問題の本質はそこじゃない。ただうまいだけの音楽ほどツマラナイ物はない。
俺は「ヘタウマなFUNNYさ」と「PUNKの持つ衝動的な激しさ」の両面を持ったバンドがやりたかった。だからこの『A PIZZA ALREADY』のイントロには「何だよ、これw」と笑われるようなフレーズを使った。「使った」と言えば聞こえはいいが、「それぐらいしか出来なかった」というのが正直なところでもある。しかし作ってみると意外にも悪くなかった。
スタジオに持って行き、3人で合わせてみたあとに拓郎から「え、これいいじゃないですか」とお褒めの言葉をもらった。「あのニヒルな拓郎が褒めてくれた!」と俺はちょっと嬉しくなって、帰り道に寄ったマックでは普段あまり頼まないビッグマックを食べた。
こうして拙いながらもリハを重ね、何となく7曲〜8曲ほどのストックができた。「これでライブはできる!」と俺たちはちょっと喜んだ。しかし実際はできない。
このバンドにはボーカルがいない。そして何よりもバンドの名前すらなかったのだ。