「SNAIL RAMPの作り方⑧:バンド名はテキトーに決まる」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』

連載・コラム

[2018/8/3 11:35]

1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!


ボーカルが見つからぬままスタジオに入っていた俺たち。ぼちぼちと曲は溜まってきていたが、バンドに名前はなかった。

俺はそんなことにもまったく気づいていなかったが、ある日、ドラムの拓郎が「そろそろ名前を決めたほうがいいと思うんだよね」と提案した。そりゃそうだよなと思いはしたが、自分としては余程変な名前でなければ何でもよかった。どんな名前だったとしても、イメージは後からついてくる。バンドがカッコよければ、その名前もカッコいい名前になるはずだとずいぶん高飛車な考えで、鷹揚に構えていた。

拓郎は提案するだけあって、きちんとバンド名の候補をいくつか考えてきていた。どんなのがあるの?と訊ねると、7個~8個ほどだったろうか、英単語が書き出された紙を見せてくれた。が、しかし、パッと見で俺が気に入るようなバンド名はそこになかった。ギターの太郎も横からその紙を見ていたが、特に何も言わなかったそこで俺は「拓郎はどれがいいの?」と訊いてみるのだが、返ってきたのは意外すぎる答えだった。

「これかな、RAMP」
「ランプぅ??!!」

俺は思わず素っ頓狂な声を上げた。いや、確かにそのリストにRAMPはあったが、まさかRAMPとは!

「たけちゃん、新しいバンドやってんでしょ? 何てバンド?」
「ん?RAMP」
「ラ、ランプ?(ぷー、くすくす)」

まわりのバンド友達に笑われる俺が想像できた。RAMP……よりによってRAMPとは!正直ダサいぜ、拓郎。しかし、拓郎は絶望を抱いている俺を無視してRAMPの説明をしやがる。

「この意味は……明かりのランプではなくて、スケボーとかのランページにつながる言葉でさ。別の意味合いでは”子供たちが暴れる、飛び跳ねる”って意味があるんだって」

スケボーだとぉ……? 俺は中学生の頃、スケボーに乗れるようになりたくて練習してみたことがあった。しかしなったく上手くならず、コンクリートの地面に後頭部を強打して以来、「あんな物に乗っている奴はいつか死ぬ」と確信し、以来二度と乗っていない。スケボーという言葉には、ちょっとした劣等感を感じる俺なのだ。

スケボー → ランページ → RAMP
「ラ、RAMP、なんかカッコいい……」

俺はスケボーに乗れないコンプレックスから、せめてその言葉にあやかろうとしたのだろうか。おまけに「RAMPの意味ですか? スケボーのランページあるじゃないですか、あのRAMPですよ」と、さも俺スケボーやってたんで的に、得意気にインタビューを受けている将来の俺まで脳内再生されていた。RAMP、悪くない。いや、むしろいい! RAMP最高。

俺は完全に丸め込まれた。今にして思えば拓郎は、何て上手なプレゼンをしたのだろう。

「じゃあRAMPで決定?」

拓郎の言葉で3人のミーティングは終わりかけた。

「RAMPだけだと、何か足りない気がすんだよなー」

俺はRAMPのカッコよさに飲み込まれつつも、その語感に物足りなさを感じていた。

「拓郎さ、ほかはどんなのがあるんだっけ? 上から読んでみてよ」

そうお願いすると彼はゆっくり読み始めた。今となってはどんな単語があったか忘れてしまったが、拓郎が「SNAIL」と言ったときに「これじゃん」と思った。

「意味は?」
「かたつむり」
「SNAIL RAMP、かたつむりが暴れる。意味わかんなくていいなー、これ」

俺はさらに気に入った。「え、でも意味わかんなすぎじゃない?」ともどちらかから言われたが、「バンド名はさ、意味分かんないくらいがちょうどいいんだよ」という謎の理由で押し切った。

が、数分経つと3人とも「かたつむり暴れる、っていーな」「かたつむり大暴れ!」「かたつむり大乱闘!」とか言い出してゲラゲラ笑っていた。

この日、俺たちはSNAIL RAMPになった。

タケムラアキラ

竹村哲●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。