「息子がもらってきた泣けるラブレター」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』
1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!
唐突だが、みんなはラブレターをもたったことはあるだろうか? こちらから疑問を投げかけておいてなんだが、そもそもラブレターの定義もなかなかに曖昧だ。
手紙で愛の告白という、絵に描いたような古典的ラブレターもあれば、すでに付き合っているふたりの間で交わされるやり取りもあるだろう。付き合っているどころか、何十年間も夫婦としてやってきた間柄でのラブレターだってあるはずだ。
そんななか、俺は1通のラブレターを目にした。つい先日のことだ。
うちには6才の息子がいるのだが、コイツがまた世間でいうワンパク男子の部類で、親の言うことを聞かない、というかハナからまるで聞いていない男の子。時に扱いに困り、引っぱたいてやろうかと思うこともしばしばなのだが、その反面やたら可愛くニコーッと笑ったりもして、そのたびにすべてを許してしまう、不思議な魅力がある子でもある。
ルックス的には残念ながら中の下の中、もしくは下の上といったところで、俺的にもDNAの責任を感じずにはいられないレベルだ。そんな彼が1年前、保育園の年中クラスで同組の女の子から好意をもたれているという、玉音放送ばりにショッキングな話をカミさんから聞いた。
「ええええええええ!!!???」
その瞬間、素で大きな声が出たほどの衝撃だった。「何で? アイツのどこがいいと思ってくれたんだ?」と、思わずカミさんを問い詰めた。「そんなの知らないわよ」とちょっと不機嫌な様子で答えるほどに、俺のそれは詰問調だった。いやいや、だってアイツは普段おちんちんを振り回しておどけてるようなTHE男子で、寝る前には必ず「おとーさぁん、あしとせなかとうでとくびをもんでぇ」と甘え、揉んでやると「あ~、きもちいい~」と目を瞑りながら呟く、6才児の皮を被ったおっさんなのだ。
そんなアイツを好きになってくれたなんて……。なんか申し訳ないような気持ちでいっぱいになりながらも、ただただ「好きになってくれてありがとう」という、柄にもなく326のようなことを呟き、紙ヒコーキでくもり空わりたくなったし、「地元のダチとfather and motherにマジ感謝」と急ごしらえのフリースタイルまでかましたくなるほど、マジ感謝だった。
しかし運命とは残酷なモノ。なんと息子はその保育園を退園することになり、ふたりは離れ離れに。その女の子のお母さんから聞いたところによると、「○○君(息子)、ほかの女の子のこと好きになっちゃうのかな」と呟いていたらしい。おぉ、おぉ、おぉ、そんなこと聞くとおじちゃんの心が締めつけられるよ。
そしてあれから1年が経った。保育園に残った彼女は年長のくじら組。年中のいるか組時代には息子を好きになってくれた彼女だが、今はほかの男の子に夢中であろう。子どもってのはそんなモンだ。
そんな折、その保育園の皆と会う機会があったようで、息子はカミさんに連れられて集まりに行ってきた。そして帰宅とともに、ニヤニヤしているカミさんから報告があった。「息子氏、手紙をもらってた」。
うぅぅうううぅぅうう! この手紙!エモすぎるよ! 何、この感情! 好きだというのを言葉で伝えたかったけれど、伝え損なったまま離れ離れになってしまった、当時5才のふたり。それでも1年間想い続けてくれて、またこうして伝えてくれるとか! ホントに?これドラマとかじゃねーの? もうキレイ!その心がひたすらにキレイ!
そんな感情を完全に忘れていた俺は、自分が薄汚れてしまっていた感がハンパなく、その手紙がただ眩しく見えた。
現実的ではないかもしれないけどさ、その時がきたらふたりには結婚してほしいわ。おとーさん、号泣しちゃいそうだなぁ。新郎のお父さんが泣くってイメージわかないけど、すべてひっくるめての感情があふれ出しそう。○○ちゃん!お嫁に来てくれるのを待ってるからね!