「コカインで逮捕」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』
1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!
いまさら知らない方もいないだろうが、電気グルーヴのピエール瀧氏がコカインの使用で逮捕されました。あの界隈の人が薬物をやっていても何の不思議はなく「だよね」ではあるのだが、瀧氏のように他方面で成功している人でさえ、社会的リスクのあるすぎる薬物をやめることができなかった、その依存症の深さが浮き彫りになった事件でもある。
それと同時に、今回の違法薬物事件によって社会的な転換期を迎えることになりそうな点にも注目したい。ポイントとしては大きくふたつ。
まずひとつ目。
昨今、有名人が薬物で逮捕されればその人の関わった作品、商品などは一律に回収やお蔵入りとなり、禊が済むまで日の目を見ることは許されない。しかし今回は「作品に罪はない」というフレーズとともに、これまで至極当然と行われていたその対応に「待った」をかける声がかなり拡がっている。この原稿を書いている3月15日現在、その声が現実化はしていないようだが、近日中に起こり得る可能性は十分にある。
そもそも、だ。その容疑者が関わったものを排除することによって、一体どんな社会的メリットがあるというのだろうか。その制作元へのクレームを回避したいという、そんな逃げの理由でないのか。懲罰的な理由もあるのだろうが、それはお門違いであろう。罰を与えるのは司法の役目だ。
ただ裁判対策、これに理由があるのであればその司法的効果はさて置き、納得できる理由ではある。裁判長の「被告はすでに社会的制裁を充分受けており」という例のフレーズを引き出すための作戦。そうなのであれば納得もいく。本当にそうだった場合、今の「作品に罪はない世論」は被告側弁護士にとって忌々しいものでしかないな。今頃「テメェら、キレイごとばっかり抜かしてんじゃねーよ!!」と悪態ついてるかもね。
ふたつ目のポイントは「報道の仕方」についてだ。
違法薬物に関する逮捕報道では、「あんなことをするなんて残念」など否定的な街の人の声を流すことが多い。これは薬物使用者の社会参加の意欲を削ぎ、治療の機会を奪って回復を遅らせる行為とされている。特にテレビはその報道過程において、薬物とその使用イメージカットを放映したりもするため、それが元薬物依存症の方の再使用欲求を刺激してしまったりもしている。そんな報道のあり方に異論を呈する動きが以前よりも活発化し始めている。
今回の件でいち早くこれまでの報道のあり方に異論を呈していた番組というと、俺の知る限りではTBSラジオ『伊集院光とらじおと』だろうか。伊集院光さんは「ピエール瀧、コカインで逮捕」を伝えると同時に、現在も薬物を使用している人たちに向かってその出口となる回復のための機関を番組内で紹介していた。
ふたつ目にあげた報道のあり方が変わっていくにはもう少し時間がかかるだろうが、変えていかねばならないポイントでもあるはずだ。
そして翻り、ここまで読んでくれている『耳マン』読者の気持ち。もちろん、これを書いている時点ですでにヒシヒシと感じております。「お前はダイヤモンドオンラインのコラムニストか!」「訳知り顔で書いてんじゃねーよ」そう言われたらスミマセンと謝るしかない。もっとも『耳マン』読者でありながらダイヤモンドオンラインのノリをわかってくれる読者がどのくらい存在するのかは分からないが、今回のコラムにはそんなノリがある。
しかし『耳マン』コラムニストとしては、こう言いたい。俺が期待しているのは石野卓球氏が「コカインで逮捕だ? そもそも本当にコカインがそんな悪なのか? 瀧は20数年もコカインやりながら、社会生活も上手くこなしてきたじゃねーか」「依存症? じゃあ酒は? タバコは? 特に酒なんて昔から犯罪の要因になってんだろうが」みたいに吠えたうえで、今回の逮捕についてちょっとチャカしたような粋なコメントを発し、「さすが電気! イカれてる!」と俺たちを狂喜させてほしい。
そして、あってはほしくないが、石野卓球氏が芋ヅル式で逮捕なんてことが起きたとしても、薬物使用の逮捕など電気グルーヴにとっては鉄板のエピソードでしかないと信じている。