「タケムラもコカインで逮捕」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』

連載・コラム

[2019/4/4 12:00]

1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!


前回のコラムでは、ピエール瀧氏がコカインで逮捕されたことについて書いたのはいいが、タイトルに困っていた俺。どうにもこうにも適したタイトルが浮かばなかったが、すでに締切は数日過ぎている。

正直なところ「あーもー、何でもいいや!えい!」と打ち込んだタイトルが、「コカインで逮捕」。ストレート過ぎるというか、単純すぎてむしろ意味がわからない。「このタイトルねぇな」と思う反面、安心もしていた。

「俺には、優秀な耳マン編集部がついている」

そう彼らはこの道のプロだ。何しろ文章で飯を喰い、リットーミュージックというデカい会社を動かしているのだ。あれ?シンコーミュージックだっけ? まあ、いいか。両方「ミュージック」がついているし。「音楽最高!」ってことだろ? もう合併したらいいんじゃないかな。でもそのときにはドレミ出版も入れてあげてほしい。正式には「ドレミ楽譜出版社」だっけ。「ミュージック」はついてないけどさ、社名に「ドレミ」って何だかかわいいじゃんか。と、音楽出版業界に無責任極まる再編を促したところで本題に戻ろう。

とにかくその優秀な耳マン編集部は、俺がコラム原稿を送るたびにチェックをし気になる箇所があれば指摘してくれる。今回の雑なタイトル「コカインで逮捕」も、修正アドバイスとともにいい代替タイトルが絶対にくるはず。俺は安堵の気持ちとともに原稿を送った。

後日、返信がきていた。

「タイムリーなネタありがとうございます!! ここ1週間、うかれてハワイに行っておりまして戻ったら瀧さんがすごいことになってて焦りました……!!!」

以上。 ・・・・・え? 以上かよ!

ハワイには行くけど、タイトルはスルー!

「指摘がないなら、あれでいいか」と、雑なタイトルは編集部に責任転嫁し、コラムのことはちょっと忘れていた。数日経った頃にはコラムもアップされ、それを読んでくれた人の感想を目にするなか、あるLINEが俺に飛び込んできた。

「竹村さんが捕まった!とマジで焦りましたよ!!」

活動は何もしていないが存在だけはしているバンド、SNAIL RAMPのギタリスト松浦からだ。

「あー、コラムのタイトルのことだな」とすぐわかったけれど、いやいやいや。んなモン間違えないでしょ、と。しかしそのLINEを読むと、松浦は耳マンのサイトではなくそこから転載されたスマートニュースで、そのコラムを目にしたようなのだ。

その画像が添付されていた。

うん。俺、完全に捕まってるね。こりゃ、やってますわコカイン。やりまくってます。

【「コカインで逮捕」タケムラアキラ(SNAIL RAMP)】と言う見出しとともに、無機質な表情の免許写真。もしかしてスマートニュースさん、コラム内容よりもこの仕掛けを作りたくて転載したんじゃないかと疑いたくなるレベルの「スネイルランプ竹村、コカインで逮捕」の見出し。

そりゃ松浦もビックリしますわ。バンド活動中は、事あるごとに「クスリなんてやるもんじゃない」と口酸っぱく言ってた俺が、コカインやって捕まっちゃうんだから。

いや、話がややこしいぞ。やってない! 俺はコカインとかやってないから! でもこんなに「俺はコカインやってない!」とか必死に否定していると、それはそれで「タケムラ、本当はやってるな……」とか言われそう。

そういや新元号も「令和」と発表され、来月からは新しい時代が始まります。となるとですよ? 新天皇即位に際し「恩赦」が行われる可能性がある。いや実は今回、政府は譲位と即位で合わせて1回の恩赦とする方針をすでに示している。昨今の恩赦対象は「交通違反」だったり「公民権停止中の選挙違反者」などの「歴然たる被害者がいない受刑者」だが、ピエール瀧氏がこの恩赦対象になる可能性だってあるのではないか?

もちろん恩赦が行われるタイミングで刑が確定していないと、その恩恵に与れないのかもしれないが、これで万が一「不問に付す」なんていう結果になった日にゃあ! 「さすが電気グルーヴ!」「やっぱりピエール瀧は持ってる!」と界隈は大騒ぎになる事請け合いだし、そんなミラクルを期待している俺が確実にいる。

いろいろと世知辛い世の中だけどさ、たまにはそんなことが起きたっていいじゃんなぁ。

タケムラアキラ

竹村哲●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。