「新生活、音楽・楽器を始めるみなさんへ・2」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』
1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマンであり、キックボクシングで日本チャンピオンにまで上り詰めたタケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!
「新生活、音楽・楽器を始める皆さんへ」というお題をTwitterのフォロワーさんからもらい書き始めた前回。楽器を始める第一歩として「楽器を買うな」ということを説明した。https://33man.jp/article/column27/008453.html
今回は、首尾よく誰かから楽器を調達できたなら次にやることだ。基礎練習なんてやらなくていいし、そもそもチューニングだってしなくていい。まず「鏡の前に立て」。
これはギターやベース、トランペットやサックスなどといった「手持ち」できる楽器に限ったことではあるが、家に姿見の鏡があるならば、その前でストラップを取りつけた楽器を構えないといけない。その時点の弾ける弾けない、吹ける吹けないはまったく関係ない。鏡に映る楽器を持った自身の姿はまんざらでもないはず、というか控えめに言って最高の気分なはずだ。これだけで「楽器をやろうと決意した」かいがあったというものだ。
特に、いわゆるバンドが好きで楽器をやろうとする人であれば、その高揚感は容易に想像できるし、あなたが大好きなバンドのメンバーもその延長線上でバンドをやっていると言っても、ほぼ間違いないだろう。
かくいう俺だってそのクチだ。
高校1年だったか、中学からギターをやっていた友達から余っている1本を借り、帰宅。チューニングの仕方も知らない状態だったが、ストラップを肩にかけ鏡の前に立ったのをよく覚えている。その友達はハードロックが好きだったためにストラップが短く、ギター自体もあちこち尖った形をしていたのがちょっと不満だったが、鏡に映るその自分を見たときにもうゴールに飛び込んだような気にすらなった。
そしてしばらくギターをぶら下げたバカづらの自分を眺めると、ソフトケースにギターを大事にしまった。その日、弾きはしなかった。だってそもそも弾けないんだもん。チューニングの仕方もわからないし、チューナーだって持ってはいない。
そんな日が数日続いたあとにようやく弾いてみる気にはなったが、その友達があわせて貸してくれた教本がハードロック用の教本で、PUNKしか聴かなかった当時の俺にはクソつまらなかった。ただ基礎中の基礎だけは何とか理解し、今度は別の友達からブルーハーツのスコアを借りてきた。ブルーハーツは俺がPUNKにのめり込むきっかけになったバンドでもあるので、そりゃもう夢中で弾き始めた。やはり好きなもの、好きな曲を演奏するのが絶対に楽しいからね。
これから楽器を始めようとする人は、まず「自分の大好きな曲」が弾けるようにチャレンジしてほしい。はっきり言ってね、基礎練習なんてどーでもいいんすよ。それは逆にある程度弾けるようになって、「あ……上手くならないとヤバいな」と思ったときから始めたらいい。
ちなみに俺がようやく自分の楽器を買ったのは、高2だか高3になってからだ。ZEP-IIというメーカーの黒のレスポール。6万4000円だったが、マジで6万円しか持っていなかった俺を見た店員さんが6万円ちょうどにマケてくれた。全財産を使い果たした俺はストラップやチューナーを買うこともできなかったが、後日に再訪。チューナーとその店で一番長いストラップを買って帰宅し、さっそく鏡の前に立った。
一番長くした状態のストラップでも自分のイメージよりもギターの位置が高かったため、ストラップにキリで穴を開けてとにかく低い位置でギターを構えられるようにした。俺のなかの正義では「楽器の位置は低けりゃ低いほどカッケー」だ。演奏を犠牲にしたって楽器を低く構えることは何よりの優先事項だったし、楽器が低いと当然に弾けないフレーズなども出てくるのだが、そんなの弾かなきゃいいだけなので何の問題も生じなかった。
なお、先ほど「楽器の位置は低けりゃ低いほどカッケー」とは書いたが実際は違って、楽器が低すぎて弾くために背中が丸まり、あまりに前かがみになるとこれはこれでカッコ悪い。ただしその辺は微妙な調整だし超個人的な好みの問題なので、好き好きにしたらいい。実際俺が見ても、胸あたりにまでギターやベースを引き上げて弾いている人で「うわ!カッケー!」て人もいるし、それぞれの信条に従い試行錯誤してみるべきだ。
「新生活、音楽・楽器を始める皆さんへ」、俺からできるアドバイスといったらこんなところかな。
実際のプレイは、やはり一番最初は人に習ったほうがいいよ。独学では時間がかかりすぎて、習得よりも挫折に辿り着いてしまう。今はどんな楽器でも「習い事」としてスクールがあるし、SNSを通じて直接バンドマンに連絡を取ってパーソナルなレッスンを受けることだって可能だろう。ぜひチャレンジしてほしい。
音楽は楽しいよ! 年齢、国籍、性別関係なくみんなで楽しめるからね!