野球なるものに真剣に取り組んでいればよかった【推しメンが結婚しちゃった日記】
元モーニング娘。の石川梨華に10年以上“ガチ恋”を続けているドルヲタのふちりんによる完全ノンフィクション連載。梨華ちゃんに健気に恋をする彼が、2017年3月13日に結婚した彼女への想いを、結婚が近いという報道があった2017年元旦から振り返り繊細に紡ぐ。(ガチ恋……アイドルにガチ(本気)で恋をすること)
3月1日水曜日
「野球なるものに真剣に取り組んでいればよかった」
梨華ちゃんの彼氏が野球選手なので、心の平安のために、野球についての記憶をなくしてしまうことにしました。今、僕は野球についてほとんど知りません。
今日、ストライクなるものは「良い球」という意味であるらしいことを知りました。牛の皮で包まれた硬い球を投げて、それを木の棒で打つスポーツであるらしいことも。球を棒で打ったあとは、どこかに向かって走るらしいです。どこなのかはわかりません。右方に向かって走る可能性もあるし、左方に向かって走る可能性もあります。西や東、北や南へ行くのかもしれません。球を棒で打った人は、球を投げた人に向かって走り、小高い丘の上で相撲をとりはじめるのかもしれません。あるいは、そのまま投球者の脇を通り過ぎ、どこまでも果てしなく駆けていくのかもしれません。太陽に向かって走り続けるのかもしれない。夜に行うときは、月に向かって走るのだろうか。どこに向かって走るにせよ、このスポーツを行う広場には危険が満ち満ちていると思われます。だって、ライオンや虎や竜や巨人たちがその広場を闊歩しているのだから。昔は、大魔神も住んでいたらしいです。恐ろしいスポーツです。命がけだ。
梨華ちゃんの彼氏は、そのスポーツの、球を投げる役割を職業としている人だと聞きました。虎や竜や巨人たちが闊歩している野の上で、身を守るものも身に着けず、球を投げる。それを職業に選ぶなんて、とても勇気のある人だと思います。もしかしたら、梨華ちゃんは、その勇気に惚れてしまったのかもしれない。
僕にはそんな勇気はとてもじゃないけどありませんし、僕は思いきり文系の男で、体がひどく貧弱なので、虎やライオンや竜や巨人に捕って食われてしまうかもしれません。でも、そんな恐ろしいスポーツだとしても、梨華ちゃんとお付き合いできるなら、僕は野球なるものに真剣に取り組んでいればよかった、と思います。
野球というものをよく知っていた小学生の頃、僕はしばしば草野球をやっていました。球を投げるのも、棒で球を打つのもうまかったです。しばしば友人に「野球の天才だ!」と褒めそやされ、有頂天になったものです。そこで満足せず真剣に野球に取り組み、プロ野球選手になっていたら、今ごろ梨華ちゃんとお付き合いをしていたかもしれません。
しかし僕は、梨華ちゃんの好みとは全く逆と言っていい道、文学の道を選んでしまいました。早稲田大学の第二文学部に入り、毎日、哲学書や小説を読みふけりました。その途中で梨華ちゃんを好きになると、「芥川賞をとるような小説家になって、梨華ちゃんと結婚したい」という気持ちが芽生えました。しかし僕は梨華ちゃんのことが好きすぎて、梨華ちゃん日記を書くことにしか情熱が向かわず、ひたすら梨華ちゃん大好き日記をブログに書きつづけました。そしてふと気づいたら、僕は梨華ちゃんが大好きなだけのこれといった取り柄のないおっさんになっており、梨華ちゃんにはプロ野球選手の彼氏ができていました。もしタイムマシンで過去に戻れるなら、「草野球だけで満足するんじゃなくて、真剣に野球に取り組め!」と自分に伝えたいです。竜やライオンなどと戦う、恐ろしいスポーツであることはわかっていますが。