梨華ちゃん、僕ね、37歳になったんだよ【推しメンが結婚しちゃった日記】

連載・コラム

[2017/10/6 12:00]

元モーニング娘。の石川梨華に10年以上“ガチ恋”を続けているドルヲタのふちりんによる完全ノンフィクション連載。梨華ちゃんに健気に恋をする彼が、2017年3月13日に結婚した彼女への想いを、結婚が近いという報道があった2017年元旦から振り返り繊細に紡ぐ。【ガチ恋……アイドルにガチ(本気)で恋をすること】


4月10日 月曜日

「梨華ちゃん、僕ね、37歳になったんだよ」

 この日、僕は37歳の誕生日を迎えました。「梨華ちゃんは32歳だから、年齢的にはお似合いだね」とよく友人に言われたものですが、梨華ちゃんは残念ながら別の人と結婚してしまいました。僕は前日の夜に飲みすぎていたので二日酔いがひどく、仕事どころではなかったため、朝からこたつの中で寝そべっていました。寝そべりながら、なんとなく銀杏BOYZのアルバムを聴きはじめました。命を激しく燃やすような爆音が、ぼんやりした頭の中に響きわたります。「梨華ちゃんが入籍したとき(3月13日)、僕は大いに泣くことだろう」と想像していましたが、そのときは強情を張っていたのか、うまく涙が出てきませんでした。しかし銀杏BOYZを聴いていたら、曲たちが僕の感情に激しいながらも優しく寄り添ってくれて、自然に涙を流すことができました。それで少しだけ気持ちが楽になり、音楽の力ってすごいなあ、と思いました。

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 夜になり、母親と父親にリビングルームに呼ばれました。テーブルの上には小さな丸いケーキが置いてあり、ふたりはにこにこして僕を見つめています。僕は、梨華ちゃんが結婚したことでひどく落ち込んでいたため、お誕生会なんてしてる場合じゃないよ、と思いましたが、口には出さずに微笑みを浮かべながらテーブルの前の床に腰を下ろしました。

 母親はケーキの上のろうそくにライターで火をともしたのち、「写真を撮るわよ」と言い、写ルンですみたいなインスタントカメラを僕に向けて構えます。僕は梨華ちゃんのこともあり笑っている場合じゃなかったけれど、なんとか笑顔をつくりました。そして母親と父親によってハッピーバースデーの歌が歌われ、僕はしぶしぶケーキの上のろうそくの火を吹き消しました。

 「何歳になったの?」と母親に訊かれ、「37歳だよ」と答えると、母親と父親は、感慨深そうに、「もう37歳かあ」と言いました。37歳にもなって童貞のうえに、梨華ちゃんにガチ恋していてすみません。梨華ちゃんが結婚したことでやばいくらい落ち込んでいてすみません。孫の顔は見せてあげられそうにもないです、すみません。という気持ちになりました。切り分けられたチョコレートケーキを僕は手早く食べ、コーヒーをごくごく飲み、逃げるようにしてリビングルームを出ました。

 自室に入ると、梨華ちゃんの生写真に向かって、「梨華ちゃん、僕ね、37歳になったんだよ」と報告しました。当然ながら、「ふちりん、お誕生日おめでとう」という答えが返ってくることはありませんでした。梨華ちゃんはただ僕のほうを見ながら、素敵な笑顔を浮かべています。僕は「いいんだよ、それで」とつぶやき、胸に鈍い痛みを感じながら、小さく笑いました。


【著者紹介】

ふちりん●1980年生まれ、埼玉県出身。おひつじ座のA型。2003年頃より当時モーニング娘。のメンバーであった石川梨華へのガチ恋を開始。その赤裸々な想いを綴ったブログやTwitterが一部のアイドルファンの間で人気を呼ぶ。趣味は読書やサッカー観戦、アイドル鑑賞、ベースを弾くこと。好きな作家は村上春樹、太宰治、中村文則。

[ふちりん]