推しが産んだ子の写真を見たくないわけではありません、むしろ見たいです【推しメンが結婚しちゃった日記】

連載・コラム

[2018/11/22 12:00]

元モーニング娘。の石川梨華に10年以上“ガチ恋”を続けているドルヲタのふちりんによる完全ノンフィクション連載。梨華ちゃんに健気に恋をする彼が、2017年3月13日に結婚した彼女への想いを、結婚が近いという報道があった2017年元旦から振り返り繊細に紡ぐ。【ガチ恋……アイドルにガチ(本気)で恋をすること】


5月4日〜24日

推しが産んだ子の写真を見たくないわけではありません、むしろ見たいです


5月4日 金曜日

 行きつけの魔女っ子バーのトイレでお財布を見つけました。僕は貧しいからよほどパクろうかと思ったけど、良心が勝利したので魔女っ子のモカちゃんにお財布を渡しました。「ふちりんえらい! 天使!」と心のなかで自分を褒めたたえました。僕は以前にも何度かお財布を拾って届けたことがあります。こんなにも他人の財布を届けているのに、僕が財布をなくすと誰も届けてくれません。

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5月7日 月曜日

 あるIT企業の社長と石原さとみが沖縄旅行に行った、というネットニュースを見ました。石原さとみと沖縄旅行に行くIT企業の社長がいて、石川梨華ちゃんと結婚するプロ野球選手がいる一方、僕は孤独と貧しさのなかでフランツ・カフカの『城』を読みながら気が狂いそうになっている。そう思ったら、とてもみじめな気持ちになりました。
 肩を落としながらTwitterを見ていると「アイドルと付き合いたかったら、IT企業の社長になれ」みたいなツイートが目に入りました。そんなのってあまりにも正論すぎておもしろくないし、だんだん腹が立ってきて、僕は思いました。「彼らみたいに社会的な成功を目指すのではなく、あえてフランツ・カフカの『城』を読み続けよう。僕は意地でもどこにもたどり着きたくないぞ」と。
 しかしよく考えたら、僕も梨華ちゃんと一緒に旅行に行ったことがあります。八ヶ岳に。ファンクラブのバスツアーで。どこにもたどり着かない旅だったけれど、とても幸せでした。

5月12日 土曜日

 梨華ちゃんのブログが久しぶりに更新されていました。梨華ちゃんも息子も元気である。なっち(安倍なつみ)からハッピーな報告があった。という趣旨のことが書かれています。僕はノートパソコンの画面に向かって「母子ともに元気そうで何よりだなあ。なっち、ご懐妊おめでとう。なお、僕からのハッピーな報告はありません」と心のなかから語りかけました。しかし僕からのとくにハッピーでもない報告ならありました。カフカの『城』を読み終わったのです。なので、Twitterに移動して「カフカの『城』を読み終わりました。これで2回通読したことになります。どこにもたどり着かない小説なので、2回読んでもとくに達成感はありません。心のなかの迷路がさらに複雑になっただけです」とツイートしました。

5月13日 日曜日

 今朝、なんか体のあちこちが痒いなあ、と思って目を覚ましました。ふとテーブルの上のノートパソコンを見やると、1匹の蚊が止まっています。原因はこいつか。しかし僕には蚊を殺す勇気がなかったので、蚊に向かって「俺の血を吸うだけ吸ってさっさと出ていけ!」と小声で語りかけました。そしてしばらく、1匹の蚊に刺されるがままにベッドに横たわっていました。

5月24日 木曜日

 録画してあった『ザ・ノンフィクション』を観ました。若い女性たちの結婚・妊娠・出産が生々しく撮られていて、梨華ちゃん夫妻のことをリアルに連想してしまい、つらい気持ちになりました。「でも梨華ちゃんは子を産んで1か月も経つのに、いまだに子の写真をアップしないから、ヲタクに優しいな……」と思いました。
 しかし僕は、梨華ちゃんの子の写真を見たくないわけではありません。むしろ見たいです。旦那さんの顔は僕に似ているから、僕の子のようなものです。梨華ちゃんと息子のツーショット、僕に気を遣わずにどんどん載せてほしいです。ただ、旦那さんの写真だけは載せないでほしいです。彼の幸せそうな笑顔を見ると、つらい気持ちになってしまうから。

ふちりん

1980年生まれ、埼玉県出身。おひつじ座のA型。2003年頃より当時モーニング娘。のメンバーであった石川梨華へのガチ恋を開始。その赤裸々な想いを綴ったブログやTwitterが一部のアイドルファンの間で人気を呼ぶ。趣味は読書やサッカー観戦、アイドル鑑賞、ベースを弾くこと。好きな作家は村上春樹、太宰治、中村文則。