ANZEN漫才・あらぽんの『アダチニスト〜足立区ストーリーズ〜』第3回:恐怖のおかきじじぃ(前半)
足立区で生まれ育ったあらぽん(ANZEN漫才)が足立区のリアルをつづっていく新連載!
クリスタル・スカルみたいなじじぃの話
足立区に住んでいるといろんな人に出会う。そしてどの年にも必ず変わった人が現れて、その人たちがその年の象徴になることが多い。卒アルの最後のほうのページにあるその年に起きた出来事年表に入れていいんじゃないかと思うような人ばかりだ。
今回は小学生の頃の夏休みに現れた“おかきじじぃ”の話。
小学校1年生か2年生くらいの夏休みは団地に住んでいた兄貴の友達のところに遊びに行くことが多かった。その頃はエアガンが流行っていて、団地にある公園で空き缶を並べて的当てしていると男の人が近づいてきた。その人はインディ・ジョーンズに出てくるクリスタル・スカルみたいな骨格で、白髪&髪の毛がサイドにしかないおじぃちゃんだった。
そしてこのおじぃちゃんが急に「お前らか、いつも悪さしてんのは」と言いがかりをつけてきた。本当になにもしていなかったから「なにもしてないです」と正直に言うと兄貴の友達が躊躇なく平手でどつかれた。
とりあえずみんなパニックになりすぐ逃げた。そこからおかきじじぃとの戦いが始まった。
夏休みは長く、この頃なんて遊ぶところも決まっている。いつものように同じ公園で遊んでいると遠くから「またお前らかぁ」と叫ぶ声が。おかきじじぃが現れた。自転車に乗ってこっちに向かってきたけど遠かったので余裕で逃げることができた。どうやら僕たちは顔を覚えられてしまったようだった。
それからは公園にいると必ずおかきじじぃが追いかけてくるようになった。しばらくするとなんで遊んでるのがわかるの?とみんなが思い始め、逆におかきじじぃを尾行して家を突き止めようということになった。
というかなんでおかきじじぃなのかというと、いつも自転車のカゴに新聞紙を敷いていて、そこにおそらく自分で揚げたおかき(?)を大量に入れていたからだ。ばぁちゃんの家によくある、正月の余った餅を小さく切って揚げたみたいなやつだ。
ある日、いつものようにおかきじじぃが言いがかりをつけてきたので、とりあえず逃げたふりをしておかきじじぃの追跡を始めた。公園と団地のマップはこんな感じだ。
おかきじじぃが“第1おかき(マップ①のところ)”から叫んできたので僕たちは畑のほうへ逃げた。そしておかきじじぃが公園を通り過ぎるのを待って追いかけると、なんと公園の前の団地と団地の間に自転車を停め、階段を登って3階の部屋に入ったのだ。そう、おかきじじぃの家は公園が見わたせる目の前の団地だったのだ。僕らが公園で遊ぶとすぐ来るのはそういう理由だった。
公園に行けばすぐおかきじじぃが来るので全体的にもういいよとマンネリ化してきたある日、兄貴の友達が「ギリギリおかきゲームしない?」と言い出した。ネーム的にも最高だし、久しぶりに遊びに緊張感が出る。ルールは簡単。おかきじじぃが自転車で追いかけて来るのをどこまで引き付けられるかを競うゲームだ。(つづく)