ANZEN漫才・あらぽんの『アダチニスト〜足立区ストーリーズ〜』第4回:恐怖のおかきじじぃ(後半)
足立区で生まれ育ったあらぽん(ANZEN漫才)が足立区のリアルをつづっていく新連載!
ギリギリおかきゲームの結果……
(前回からの続き)おかきじじぃは見た目がかなり高齢だったし、自転車も怒鳴るわりにはゆっくりしか漕いでこなかったのでとりあえずやってみることになった。公園に着いてしばらくするとおかきじじぃ登場。その瞬間、兄貴の友達が「くそじじぃうるせー!」とおかきじじぃを挑発し始めた。
ちょっと待って話と違うぞと思ったら、頭に血がのぼったおかきじじぃがいままでにみたことないスピードで追いかけてきた。全員が「はやっ!」と面を食らい僕らのフォーメーションは見事に崩された。
誰かの「バラバラに逃げろ!」という声とともにみんなが逃げる。僕も急いで団地の畑側に逃げたら、なんとおかきじじぃが段差を乗り越えながら畑まで自転車で追いかけてきた。いままでにない行動力と畑の細い道を上手に自転車で追いかけてくるおかきじじぃに「こいつ、思ってるより若い!」とマジでパニックになってがむしゃらに走った。
当時から太っていた僕は必死に右に左に曲がっておかきじじぃから逃げようと走ったが、自転車との相性バツグンのおかきじじぃの射程圏内にずっと入っていて捕まるのも時間の問題だった。
体力に限界がきたので近くのプラモデル屋さんに助けを求めて入り、店のおじさんに理由を説明すると、おじさんが「いつもおじさんが言ってたのは君たちのことか」と僕たちに言った。その瞬間「終わった」と誰かが言った気がした。このプラモ屋仲間かよと戦意喪失したとき、自転車のブレーキ音と「ガッチャン」とスタンドをとめる音が。おかきじじぃ登場だ。
僕たちは袋のねずみだ。逃げ場はない。おかきじじぃが笑いながらゆっくりと僕の目の前にきて、大声で「こらぁこの悪ガキ」と怒鳴りちらす。あまりにもクリスタル・スカルすぎて俺泣きじゃくる。
そして、それを楽しむかのようにプラモ屋がとんでもないことを言い出す。
「もうおじさんの子どもにしちゃいな。ほら連れてってもらいな」
そして、僕泣きじゃくる。その間ずっとおかきじじぃは笑いながらおかきを食べている。あまりにも僕が泣いて会話にならないので「こんどやったらただじゃおかねーぞ」と言って、かごのおかきをスーパーにある透明の袋に入れて大量にくれた。
それからおかきじじぃは会うたび僕におかきをくれるようになった。
僕は思った。
おかきじじぃが作るおかきの塩加減は絶妙だ。