ANZEN漫才・あらぽんの『アダチニスト〜足立区ストーリーズ〜』第6回:足立区の赤鬼と青鬼(後半)

連載・コラム

[2018/8/15 12:00]

足立区で生まれ育ったあらぽん(ANZEN漫才)が足立区のリアルをつづっていく新連載!


草むらで起こった悲しき事件

(前回からの続き)「お腹が痛い!」ある日の下校途中、竹井くんが急な便意に襲われた。当時は今ほどコンビニもなく、トイレに行くには誰かの家で借りるというような選択しかなかった。そのときふたりはちょうどそれぞれの家の中間くらいにいたため、どんなに急いでも家には間に合わないと思った竹井くんは、草むらですることを決意した。

「誰にも言わないで」と言う竹井くんに「なにで拭くの?」と訪ねると「葉っぱ」と返ってきた。そして、竹井くんは草むらの陰に入っていき、しばらくすると僕に「大きめの葉っぱ探してきてくれない?」と言ってきた。

竹井くんが入った草むらにはノーマルな椿的なツツジ的な植物しか生えておらず、拭き取るには葉っぱの面積が不十分だった。僕は初めての経験だったので不思議なテンションになり、時期でもないのに竹井くんに「葉っぱ探してくるからそのあいだ蜜吸ってて!」とツツジの花を渡し、大きめの葉っぱを探しにいった。

そしてまさに天狗が持ってそうな大きな葉っぱを見つけた。面積も大きいしこれにしようと葉っぱを取ろうとしたら、天狗が持つくらいなのでめちゃくちゃ頑丈で苦戦を強いられてしまった。かろうじて若葉を2枚ゲットできたので竹井くんに「2枚でいける?」と尋ねると、「とりあえずやってみる」と返答がきた。天狗の葉を2枚渡すと、

「無理だ、滑っちゃう」

と悲しそうな声が聞こえてきた。僕には状況が想像できた。そして思った。「ざらつき必要だったな、僕のミスだな」と。「面積ばかりに気をとられてみえてなかったな」と。イメージとしてはパンにマーガリンを塗るような感じだったんだろう(お食事中の方すみません)。拭き取るというより塗り伸ばすみたいな感じだったんだろう。

しかしその葉っぱでどうにかするしかないので、謎に「がんばってみて」とエールをおくった。すると、竹井くんがこう言った。

「わぁ! 穴空いた」

天狗の若葉はどっちかといえばしっとりよりもパリパリだった。僕には状況が想像できた。そして思った。「指に力入れすぎたんだな、勝負したんだな」と。

なにも言うことができず待っていると草むらから竹井くんが出てきた。草むらから出てきた竹井くんの左手は泥だらけだった。僕はなぜか冷静になり、「竹井くんサウスポーだったんだ」と思いながら「大丈夫だった?」と聞いた。そして、竹井くんに

「手でいった」

と言われた瞬間

「汚なっ!」

と反射的に言ってしまった。完全に禁止用語だった。それを聞いた竹井くんは無表情で家に向かって走り去った。それから竹井くんとはまったく話さなくなってしまった。あのひと言で竹井くんのプライド的なものを傷つけてしまったのだろう。ちょうどクラス替えもあり、クラスも遊ぶグループも変わってからの竹井くんがどうなったかはまったくわからない。

ただきっと、翌年のあの草むらのツツジは例年よりも格別に甘かったと思う。

みなさん今年の夏はとても暑いです。こまめに水分補給して熱中症対策しましょう。

夏といえばスイカということでカブトムシも大好きなスイカ柄の衣装作りました

あらぽん

1985年10月13日生まれ、東京都・足立区出身。幼馴染のみやぞんと2009年11月にANZEN漫才を結成。みやぞんの特技であるギター、そしてあらぽんのラップを組み合わせた音ネタで活動するようになり、『足立区の歌』などのネタで注目を集める。『とんねるずのみなさんのおかげでした』『世界の果てまでイッテQ!』などでみやぞんの激烈天然キャラが爆発して話題となり、今や大注目コンビのひとつとなっている。