ANZEN漫才・あらぽんの『アダチニスト〜足立区ストーリーズ〜』第8回:ともこcrew(後半)
足立区で生まれ育ったあらぽん(ANZEN漫才)が足立区のリアルをつづっていく新連載!
ともこの金まきタイム 彼女たちのその後
(前回からの続き)『金まきタイム』はその名のとおりお金をまく時間。ともこが靴で地面に丸印を描き、メンバーとその日選ばれた公園にいた子をその中に入れる。そして、10メートルくらい離れた場所でともこがみんなに背を向けてスタンバイする。
まずはともこが謎のBGM「ディーディー」と口ずさみながら左右に動く。イメージはスペースインベーダーみたいな感じだ。この金まきはスイカ割りに近いゲームで、うしろを向いているともこを印の中心にくるように指示し、お金を投げてもらうというもの。ともこが印からずれると、あんなにしゃべらなかったねーちゃんも「左!左! もっと左!」と必死に指示をだす。そして、ともこが中心にきたら「ほおって!」と叫び、お金を投げてもらうのだ。
ともこが中心にくるたび、ねーちゃんも、よっふみもあきえちゃんも「ほおって!ほおって!ほおって!」と叫ぶ。ちなみに印から外れたお金はもらえない。投げるお金は1円、5円がほとんど。しかし、1回だけ500円が投げられる。
ともこの「ディーディー」のリズムが速くなったら500円チャンス。当然ともこのステップも速くなる。みんなは印を外したくないので慎重になり、2、3往復ともこを泳がせる。
公園にはともこのすり足の音と「ディーディー」のBGMだけが聞こえる。もはやあきえちゃんもうさぎを抱いてない。心の中で「今、今、今、今、今」とタイミングを合わせて、「ほおって!」とねーちゃんが叫ぶ。
1円、5円に比べて重い500円玉はいい感じで投げやすいのか、力が入りすぎてしまい、はるか外へ行ってしまう。そんなときもよっふみは外れた500円玉をすぐに拾い行き、ともこにわたす。よっふみはルールは守るタイプだ。
そんなことをしながら遊んでいたけれど、だんだんと公園にも行かなくなり、久しぶりに行ったときにはともこcrewはいなくなっていた。
ともこはあれから2年くらいしてどこかに引っ越してしまったらしい。ねーちゃんはどうなったかはわからない。
よっふみとはだいぶ時間が経った中学生の頃、再会することになる。彼は下校の時間、門の前で自転車に乗って誰かを待っていた。自転車はあの頃のまま?と思うくらいボロボロ。そしてまだ多少逃げる。
よっふみは中学に通っている女の子を待っているようだった。待っていた女の子は僕の同級生だったので、彼女に「知り合い?」と聞いてみると「わかんない。なんかいつもついてくる」と言われた。やばい空気が漂いまくってるなと思った。
その女の子が付き合っていたのが学校のヤンチャな先輩で、あまりにもよっふみが彼女につきまとうので、逃げるよっふみを凄腕漁師ばりに神社に追い込んで捕まえ、自転車もろともボコボコにしていたのを見た。よっふみを見たのはそれが最後だった。ジャージはシックな黒になっていた。
あきえちゃんは、さらに年月が経ち、僕が25歳くらいのときに見かけることになった。
身長も伸びて体型もだいぶふっくらしていたあきえちゃんは、白髪のおじぃちゃんと手をつないで歩いていた。自分のお父さんなのかおじぃちゃんなのか、介護的なことをしているのかなと思った次の瞬間、おじぃちゃんと道端でキスをし始めたのだ。しかも顔をなめ回すんじゃないかくらいの勢いで。
今でもどういう状況だったのかわからない。その後もふたりが手をつないで歩く姿をたびたび見かけた。
結果、その後のともこcrewは4分の2がヤバかった。
そして、ともこがなぜあんなにお金持ちだったのかはいまだに謎だ。