ANZEN漫才・あらぽんの『アダチニスト〜足立区ストーリーズ〜』第29回:足立区モンスターハンター(9)
竹内「先輩はなんだって」
本郷「やめとけと俺たちにはケツふけるレベルじゃないって」
あら「終わったじゃん」
竹内「逃げていい?」
あら「俺にギア付きのチャリ乗らせて」
本郷「待って俺名前言ってるから無理だから」
竹内「そもそもなんで絡んだ?」
本郷「コルク狩りのシーズンだから」
竹内「いちご感覚やめて」
吉井「まじでやばくない?」
本郷「謝ろう」
あら「まじかよ」
そして本郷についていきハイレベルの待つベンチへ。
ハイレベル「連絡とれた?」
本郷「はい、ハイレベルさん絡んでしまってすみませんでした」
ハイレベル「お前いい根性してんな」
本郷「ほんとすみませんでした」
ハイレベル「俺もそういう時期あったから別にいいけどむやみに絡むなよ」
ハイレベルはハイレベルな大人だった。全員で何度も野球部みたいな謝罪を繰り返し、なんとか示談でその場をしのぎしばらくすると本来の目的を思い出す。遠回りとボンタンくんとハイレベルの件で時間はもう夕方から夜に切り替わるくらいになっていた。
本郷「漢字中めんどくせーな」
あら「いやそのための集まりでしょ」
竹内「というかもう終わってんじゃね?」
携帯をみるとまとめくんから着歴が埋まるほどの鬼電がかかってきていた。
あら「電話すごいけど」
本郷「俺、電池切れてたわ」
吉井「一番やばいんじゃない?」
恐る恐るまとめくんに電話してその後の話を聞いてみた。
あら「ごめんいろいろあって」
まとめくん「おせーよ、てか電話出ろし」
あら「ほんとにいろいろあって」
まとめくん「とりあえずこっちは大丈夫。今漢字中もみんなでサイゼリアにいる」
あら「なんでそうなった?」
漢字中との待ち合わせ場所に到着するとすぐに漢字中全員が謝ってきてまったく喧嘩にならなかったらしい。
むしろ喧嘩ができるようなメンバーでもなかったらしく、その後サッカーの話で盛り上がりそれぞれの学校でサッカー部の練習試合をする約束をして話足りなくてお腹も空いたらしくみんなで近くのサイゼリアに行き当時定番だった格安満腹コンビネーションのミラノ風ドリアに目玉焼きハンバーグを注文してみんなで仲よく食べ、その場は解散していたらしい。
そっかそっか争わなくてよかったなと思いつつ、それを聞いて「サッカーというスポーツはやっぱり平和を招くスポーツなんだ。チームプレーは素晴らしい」と思った。そしてサイゼリア。みんなでご飯を食べることもやっぱり大事で「同じ釜の飯を食べた仲」という言葉のとおり、同じ食べものを食べることも信頼に繋がる大事なコミュニケーションのひとつだなぁと再確認した。
ホッと肩を撫で下ろし、僕たちも来た道を戻り、家族の待つ家へと帰った。僕が33年間生きてきたなかでの「一番無駄な日」の話である。