ANZEN漫才・あらぽんの『アダチニスト〜足立区ストーリーズ〜』第30回:マドンナたちとプール
野々村の変!からの……
川谷「どうしたの?」
野々村「まじむかつくわ。もう帰るわ」
マドンナ「どうしたの? なになに!?」
野々村の手にはプラスチックのトレイだけがあった。
川谷「フランクフルトは?」
野々村「買ってすぐトレイで転がって落とした」
みんなが爆笑する。
マドンナA「うけるんだけど」
マドンナB「もったいな」
川谷「それ痛いね」
場を和ませられるような出来事ではあったが野々村は違かった。
野々村「まじ笑えないから。500円捨てたわ」
どこに怒りの矛先をむけていいのかわからず愚痴り続ける野々村に川谷が言う。
川谷「自分が悪いんじゃん」
このひと言で青春のキラキラがギラギラになった。
野々村「もういいわ俺帰るわ」
川谷「それはないっしょ」
野々村「まじむかつくからいいよ」
マドンナ「フランクフルトは?」
野々村「落としっぱ」
売店の方に目をむけると、ちょうど売店とテーブルの間くらいの距離に新品のフランクフルトが転がっていた。近くで見てみるとケチャップとマスタードを付けたまま何回転かしている様子で、回転的にはトリプルトーループはしている感じだった。
怒りの収まらない野々村をどうにかなだめようとマドンナが言った。
マドンナA「これ店員さんに言えば換えてくれるかもよ? 食べてないから落としたのも見てるし」
野々村「絶対無理だよ」
マドンナB「聞いてみようよ」
マドンナC「私たちが聞いてくるよ」
そう言うとマドンナたちはリプルトーループなフランクフルトを拾って売店のお兄さんに事情を説明した。するとマドンナパワー炸裂でなんと売店のお兄さんが新しいフランクフルトをくれた。
マドンナA「大丈夫だったよ。次は落とさないでねだって!」
野々村「まじで新品のフランクフルトじゃん。ありがとう」
マドンナたちのサポートでなんとか難を逃れた。無事にフランクフルトを食べ終え、楽しみにしていた遊園地に到着した。遊園地には定番的な乗りものはすべてあった。まずは定番のジェットコースターに乗るのかなと思ったら超昔からあります感全快なバイキングに乗りたいとマドンナが言いだした。バイキングは前後に行ったり来たりする巨大なブランコみたいな感じの船型の乗りもの。ウォーミングアップの気持ちでみんなで乗った。
乗ってみると小さいとはいえ迫力と重力がそれなりにすごかった。マドンナもただメンもわーきゃーいいながら乗りものを楽しむ。そして降りようとしたときマドンナが言った。
マドンナ「もう1回乗ろう!」
ここから地獄が始まった。降りてすぐに2回目のバイキング。同じテンションでわーきゃーいいながら終わる。そしてまたマドンナが「あははもう1回乗ろう!」。2回目終わりにまたすぐにバイキング。わーきゃーして終わりに向けての動きの余韻の途中でマドンナが「もう1回乗ろう!」。
お前ら気狂ってんか!
そこからさらに2回バイキングして計5回の連続バイキングで荒木少年の三半規管は完全にぶっ壊れた。
マドンナ「ジェットコースターいこう」
あら「ごめん俺少し休むわ」
鳩「え! いこうよ」
あら「まじ吐くわ。今俺死に際の像だから死ぬ姿みせたくない」
鳩「大丈夫? 顔青いよ」
あら「5はそうなるよ。あとでいくから」
鳩「わかった」
みんなを見送ると荒木少年はトイレに駆け込んだ。そこから30分くらいは動けなかった。しばらくしても吐き気は落ち着くことがなく、そこからなにも乗りものに乗れず、歩くのも精一杯という常に死にすん状態でみんなに必死についていった。その頃には、マドンナなんてどうでもいいわ頼む寝かせてくれむしろフランクフルト2~3本落として帰ろうかな、としか考えられなくなっていた。
バイキングからの記憶は気持ち悪さ以外ほぼなく、気がついたときには家の布団で「気持ちわり~」と言いながら寝ていた。いろんな偶然で行くことになったマドンナたちとのお出掛けは、後半に野々村をぶち抜いて荒木少年が空気を壊すという結果になってしまった。
夏の青春には天使と一緒に魔物も棲んでいる。