ANZEN漫才・あらぽんの『アダチニスト〜足立区ストーリーズ〜』第31回:そんな先輩

連載・コラム

[2019/9/5 12:00]

足立区で生まれ育ったあらぽん(ANZEN漫才)が足立区のリアルをつづっていく新連載!


先輩からの教え

先輩が学校を卒業する前に後輩の俺たちを土手に集めた。「お前たちにこの中学任せっから舐められないためにケンカ教えるわ」ということだった。

先輩はなんでも教えてくれた。そんな先輩に呼び出されたのは昼寝したくなるようなポカポカ陽気のお昼だった。土手のまっすぐな道に自転車に乗った先輩らしき姿がみえた。

やはりあれは先輩だ。なぜなら先輩の自転車は缶スプレーで自ら金色に塗装し、赤と白の紅白テープを交互にフレーム部分に巻きつけていたからだ。さらに防犯登録のシールの横には自動販売機に貼ってあったと思われるマイルドセブンと書かかれたシールが貼られ、グリップの先端からはいかそうめんみたいなヒモ?がなびいていた。自転車に降りるとすぐに先輩が言った。

先輩「はい、お疲れちゃーん」
一同「お疲れ様です!」
先輩「お前らケンカの必勝法知ってるか?」
一同「知らないっす」
先輩「教えてやるよ」
一同「はい!」

もう春が来ているのか、先輩越しの土手には白や黄色のモンシロチョウがゆらゆらと飛んでいた。

先輩「これから話すのは俺の必勝法な」
一同「はい!」
先輩「これで負けたことねーから」
一同「知りたいっす!」
先輩「落ち着けよ」

先輩は自転車の荷台に無理やり巻かれた子供イス用のクッションの隙間から何かを取り出した。金色&紅白テープの自転車が土手の緑との絶妙なコントラストで浮かび上がっている。

先輩「ケンカにはこれが必要なんよ」
一同「はい!」

先輩が取り出したのは大型バスの修理するんですか?と言いたくなるような大きさのスパナだった。長さは30センチはあったと思う。(次ページへ)