ANZEN漫才・あらぽんの『アダチニスト〜足立区ストーリーズ〜』第32回:みやぞんとの初コンビ

連載・コラム

[2019/9/26 12:00]

足立区で生まれ育ったあらぽん(ANZEN漫才)が足立区のリアルをつづっていく新連載!


初めての漫才は……

ギラギラしていた世界にいてもお笑いの世界への憧れが常にあった。お笑いを意識し始めたのは小4くらいだった気がする。その頃のテレビにはダウンタウンさん、とんねるずさんが毎日のように出演していて、おかげでした、生ダラ、ごっつぇぇ感じ、HEY!HEY!HEY!は必ず観ていた。タモリさんとナインティナインさんが出ていたジャングルTV〜タモリの法則〜も好きで、番組内でタモリさんが七輪でマグロ炙って食べたりするのを自分もいつかやってみたいなと思いながら観ていた。

そんななか、ある番組が放送されたのをきっかけにお笑い芸人への憧れがより強くなる。小5か小6くらいだっただろうか、テレビで第2のダウンタウン発掘オーディションみたいな番組が放送された。そこで優勝したのは“りあるキッズ”さんだった。

自分と同じくらいの年齢なのにすでに漫才をしていて、小学生なのにすでにお笑い芸人をやっていた。りあるキッズさんに刺激された僕たちはその年のクラスの学芸会でグループを組んで漫才をすることになった。そこにはみやぞんもいたが、そのときは別々のコンビを組み、僕は吉井、みやぞんも別の人と漫才をすることになった。

ノリで漫才をすると言ってはみたものの何もわからない。ネタを作らないと始まらないのでとりあえず吉井と作文用紙に向き合った。

吉井「ほんとあらぽんに任せるよ」

いきなり全投げしてきた吉井。

あら「とりあえず自己紹介なのかな?」
吉井「どうしようかね」

ネタの書き方がわからず何日もえんぴつが進まない。時間だけが過ぎていき、本番まで1週間を切った頃、追い込まれすぎてやっと書き始めることができた。

あら「OKこれでどう?」
吉井「やってみるしかないね」
あら「じゃ練習しようか」

本番まで時間がなかったので休み時間も放課後も毎日練習をした。そして迎えた本番。僕たちの出番は3組中2番目だった。全部の内容は覚えてないが、一番最初の自己紹介のくだりだけは今でも覚えてる。僕たちのコンビ名は『超ウルトラスペシャルロケットGOひろみ』だった。

ふたり「ど~も僕たち」
吉井「超ウルトラスペシャルロケットGOひろみです」
あら「長いわ」
吉井「痛ったぁ~い、飛んでった~」
あら「どこに~!?」

僕は二重構造のハリセンを持っていて、突っ込むとそれが飛んでいくという仕掛けになっていた。後半に飛んでったという謎のくだりがあるのはそのためだ。謎な飛び道具始まりで終始沈黙が続き、地獄のような時間だけが流れていった。

僕たちの地獄のような空気を変えたのは、トリを務めたみやぞんのコンビ。みやぞんも相方もクラスの人気者で最高のコンビだった。ネタは当時流行っていたまじかる頭脳パワーという番組のまじかるバナナというゲームをオマージュしたネタでちゃんとしていた。さすが人気者コンビ。3組のなかで一番場を盛り上げていた。

そうして僕たちはそれぞれが初漫才を終えた。時は流れて中学卒業間近。それぞれの進路も決まり、あとは卒業式を待つだけだった。しかし、みやぞんの進路がなぜかまだ決まっていなかった。(次ページへ)