ANZEN漫才・あらぽんの『アダチニスト〜足立区ストーリーズ〜』第31回:そんな先輩
先輩「はい、これで天下」
一同「どうしたらいいですか!?」
先輩「落ち着けよ」
一同「はい!」
先輩「まず、ケンカになりそうになったらうしろの腰のベルトにスパナ隠すんだよ」
一同「はい!」
先輩「そしたらケンカになって殴られるだろ?」
一同「先輩! いきなりくらうんですか!?」
先輩「落ち着けよ」
一同「はい!」
先輩「1発もらって相手の力量みるんだよ」
一同「はい!」
先輩「そしたらよ、だいたいが強ぇーよやべぇーよってなるだろ」
一同「はい!」
先輩「そこからひたすらガードよ」
一同「先輩! 何発もくらい続けるんですか!?」
先輩「落ち着けよ」
一同「はい」
先輩「アゴは絶対もらうなよ」
一同「はい!」
先輩「5、6発でよ、負けた雰囲気出すんだよ」
一同「先輩! まだ負けたことないっす!」
先輩「落ち着けよ」
一同「はい!」
先輩「うずくまれよ」
一同「はい!」
先輩「そしたらよ、相手が殴り疲れてテンションあがって暴言はいてくるから」
一同「先輩! ケンカ終わってませんか!?」
先輩「落ち着けよ」
一同「はい!」
先輩「あきらめんなよ」
一同「はい!」
先輩「そしたら勝ち誇って〆コメント言ってうしろ向いて歩き出すからよ」
一同「はい!」
先輩「そしたらチャンスよ!」
一同「はい!」
先輩「相手が歩き出したら持ってるスパナでうしろからドーンっつってっ!!」
一同「ドン、ドーンっつって!?」
先輩「これで天下よ」
先輩のケンカのやり方がまさかの不意ち狙いという卑怯な戦い方に一同驚愕し、その後もベラベラ喋っていた先輩だがその話はまったく耳に入らず、暖かい日差しのなか僕たちの耳には優しい小鳥のさえずりだけが聞こえていた。
そんな先輩は制服をボンタン仕様に自分で裁縫して鬼腰パンで履いていた。
そんな先輩は乗り込んだ中学の番長に返り討ちに遭って、以後番長を自転車に乗せ送り迎えをするパシりなっていた。
そんな先輩は後輩をケンカに立ち会わせて、後輩の目の前でワンパンで気絶させられていた。
そんな先輩は真冬の土手で女の子と話すのに夢中で自分のアウターと帽子が燃やされて暖をとられていることに気がつかない。
そんな先輩は決まった床屋さんじゃないとパンチパーマをかけない。
そんな先輩は中学生だけど毛量の少ない髭を伸ばしている。
そんな先輩はバットを持っていると少年野球と間違われる。
そしてそんな先輩は身長が160センチ未満だ。
話し出すと数えきれないほどの武勇伝がある。先輩はいろんなことを教えてくれる。