平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)【音楽“ジャケット”美術館】第1回:音とアートワークが調和した美麗ジャケ

連載・コラム

[2018/7/31 12:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


第1回:音とアートワークが調和した美麗ジャケ


平井“ファラオ”光の音楽遍歴

僕の人生において音楽は常に身近な存在であり続けた。

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小学生低学年の頃からトランペットを習い、学生時代は吹奏楽部に入り、ギターも多少やったり、ケーナというペルーの民族楽器を練習したり、ボーカルレッスンを受けハードロックのコピーバンドでボーカルを担当しガンズ・アンド・ローゼスやレッド・ツェッペリンをシャウトしていた時代もあった(そんな僕のカラオケの18番は細川たかし『北酒場』)。

聴き手として音楽に触れたのは小学校6年生のとき。まわりの流行に遅れまいと若干無理して当時売れているCDを買ってみたのが始まり。FIELD OF VIEWの『突然』、通称“ポカリの曲”。これが人生で初めて買ったCD。無理して買ったとはいえ聴いてみるととてもいい曲で繰り返し聴くようになり、さらに当時流行っていたスピッツやL⇔Rあたりを聴きどんどん音楽を好きになっていった。そしてB'zの『LOVE PHAMTOM』でいわゆる「ブッ飛ぶ」という感覚を味わうことになるのである。

B'zにはまった僕はそこからB'zのルーツでもあるヴァン・ヘイレンやエアロスミスなどの洋楽ハードロックを聴くようになり、さらにハードロックから派生したヘヴィメタル、エアロのルーツでもあるローリング・ストーンズとその時代その周辺の音楽、さらにストーンズのルーツでもあるブルースなど、ロックを主軸に好きなアーティスト周辺を相関図的に掘り下げていくのが好きになった。

そしてその過程のなかで時たま出会う、墓まで持っていきたいと思うほどの人生の名盤。そんなアルバムを聴くたびに思う。僕は一生音楽から離れることはないだろうと。

それだけ音楽にどっぷりはまり、音楽以外はいらない何も捨ててしまおうとさえ思っていた僕がなぜお笑いの道に走ったのかはまた別の話として、とにもかくにもついに念願の音楽関係の連載をやれることになった。内容としては、音楽と同時に絵画を見るのも好きなので、僕が持っているCD(現在およそ1,000枚くらいだろうか)のなかで絵画的な目線で見ても優れていると思うジャケットを紹介していくというもの。

ダウンロード全盛の昨今、ジャケットデザインの重要性があまり意識されなくなってきているなか、音楽はジャケットも含めてひとつの作品であるということを理解してもらうという意味でも非常に意義のある連載をいただいたと思う。とはいえそんなに力んで読まれても困るし、こちらも別に思想全開で書くつもりはまったくないので、軽く鼻くそでも食べながらだらだら読んでもらえたらと思う。

けど歩きスマホはよせよな。あれだけはお兄さん許せないんだ。それじゃ前置きはこれくらいにして、『音楽“ジャケット”美術館』第1回に取り上げるのはこれ。

音とアートワークが調和した美麗ジャケ

スタン・ブッシュ『Change the World』(2017年)

スタン・ブッシュはアメリカのベテランシンガーでありギタリスト。爽快感のある正統派のメロディアスハードロックを久々に聴きたいなーと思っていたところに、ショップの視聴機で出会い、思わずフルで一枚聴き通して店員にブチ切れられたくらいの理想的な1枚。(買ったから許せよな)

同作において残念ながら日本盤はリリースされていないが、全編にわたってポジティブなエネルギーが満ちあふれており、メロディの美しさも含めとにかく充実した内容。ハードロックという音楽に対して「うるさい、ただ叫んでるだけ」というイメージを持つ人はいまだに少なくないが、そのイメージを1発で覆してくれるタイプのクリーンなハードロックでもある。

肝心のジャケットだが、“世界を変える”というタイトルが示すとおり、荒廃した世界(荒れ具合から見て足立区と思われる)を天使のような少女が歩き、その道に綺麗な花が咲いていくというわかりやすくメッセージ性のあるアートワークになっている。冷たい印象の寒色のなか、鮮やかな花の色がアクセント的によく映えている。

風船のように持ち歩いているのは理想の地球の姿か、見る者の視線はやはりそこにもっとも集中する。知らなくても思わずジャケ買いしたくなる美麗ジャケだ。やはり良いジャケットの条件として、この作品のように内容と調和していることがひとつ挙げられる。ただただメンバーの写真だけ載せられても中身のイメージなんて湧かないでしょ? ちなみにこのアーティストのジャケットはほかの作品も綺麗なものが多いので、時間があればぜひ調べてみてほしい。

あ、こんな感じで続けていきますんでよろしくお願いします。

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)

ひらい“ふぁらお”ひかる●1984年3月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に新道竜巳とのお笑いコンビ“馬鹿よ貴方は”を結成。数々のテレビ/ラジオ番組に出演するほか、『THEMANZAI2014』『M-1グランプリ2015』の決勝進出で大きな注目を集める。個人では俳優やナレーターとしても活躍。音楽・映画観賞や古代エジプト、恐竜やサンリオなど幅広い趣味を持つ。