正直「やっちまったな」なジャケ/ローリング・ストーンズ『サタニック・マジェスティーズ』 平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2018/9/25 12:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


第9回(番外編):正直「やっちまったな」なジャケ/ローリング・ストーンズ『サタニック・マジェスティーズ』


さてここらで2度目の番外編、いつものコンセプトとは真逆のドイヒーなジャケットをご紹介したいと思う。

<耳マンのそのほかの記事>

ローリング・ストーンズ『サタニック・マジェスティーズ』(1967年)

ローリング・ストーンズである。詳しい説明は不要の生きる伝説、世界一偉大なロックンロールバンドだ。僕にとっても世代は全然上なのにあらゆるバンドのなかでトップ3に入るくらい好きなバンドである。ただし今回紹介する1967年発売のこのアルバム『サタニック・マジェスティーズ』は正直「やっちまったな」と言わざるをえない。「あ、やっちまったな」である。「あ、これあんたらこれ、やっちまったなこれ」である。

正直内容は全然悪くない。ただブルースを基盤にしたロックンロールバンドであるストーンズらしからぬサイケデリックなサウンドに発売当時は相当酷評され、ストーンズ最大の失敗作とまで言われたようである。確かにかなり実験的な要素が濃く、ドラッグを摂取することで見える幻覚のビジョンをそのまま音楽に反映させたサイケデリックロック隆盛の時代に、その流行に乗る形でいつもの自分たちらしさを捨て、思いっきり舵を切ってみたのだろう。まあ表現者であれば誰しも同じ場所に留まっていたいとは思わないもので、未知の領域に挑戦したくなるのは当然。そのチャレンジ精神は評価するべきだし、ましてやその後のストーンズはロック史に残る大名盤を立て続けに連発して見事に汚名を返上しているのだから、改めてこの時期のストーンズをこれはこれで彼らの一面だと冷静に評価するべきだと思う。

だが問題は内容ではない。当然ジャケットのことである。まあジャケットからしてほかのストーンズのアルバムと並べても異色感が出まくっているのだが、それはいい。当時サイケデリックロックの代表的アルバムといえばビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(1967年)、『サタニック・マジェスティーズ』より半年ほど前に発売されたアルバムである。そのジャケットがこれ。

ビートルズ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(1967年)

はい、これはもう完全にこれやっちまったなこれストーンズこれである。実際このアルバムの影響力はすさまじく、サイケデリックロックのアルバムジャケットはこういうごちゃごちゃした感じのジャケットが多かったのだが、そのなかでもストーンズは長いタイトルやその響きといいあまりにも意識しすぎなのだ。

結局これだけ寄せすぎたせいで大傑作と評価された『サージェント・ペパーズ〜』と比較されてこき下ろされてしまっているので『サタニック・マジェスティーズ』は損しているのだ。とはいえ『サージェント・ペパーズ〜』のジャケットに「WELCOME THE ROLLING STONES(ローリング・ストーンズを歓迎)」と書かれた部分があり、『サタニック・マジェスティーズ』にもよく見るとビートルズのメンバーが写っていたりするので、わりと公認?で遊び心くらいのものだったのかもしれないが。

それにしたってこれはさがにこれやりすぎだろこれストーンズこれしかしこれホントにこれ。

え?

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)

ひらい“ふぁらお”ひかる●1984年3月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に新道竜巳とのお笑いコンビ“馬鹿よ貴方は”を結成。数々のテレビ/ラジオ番組に出演するほか、『THEMANZAI2014』『M-1グランプリ2015』の決勝進出で大きな注目を集める。個人では俳優やナレーターとしても活躍。音楽・映画観賞や古代エジプト、恐竜やサンリオなど幅広い趣味を持つ。