不気味さに魅了されジャケ買い続出?/トゥリーズ『オン・ザ・ショア』 平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第7回:不気味さに魅了されジャケ買い続出? トゥリーズ『オン・ザ・ショア』
第7回にご紹介する作品はこちら。
トゥリーズ『オン・ザ・ショア』(1970年)
イギリスのフォークロックバンド、トゥリーズのセカンドアルバム。彼らは活動期間は短かったものの、英国らしい哀愁と憂いのフォークロック、そして同作の印象的なジャケットによって音楽史に強烈なインパクトを残した。ジャケットはピンク・フロイドやレッド・ツェッペリンなど錚々たるアーティストのジャケットデザインも手がけたアート集団・ヒプノシスのメンバー、ストーム・ソーガソンによるもの。少女が庭でこちらに向かって水を撒いている瞬間を切り取ったこのジャケットにはどういった意味合いが込められているのか、意図するところはよくわからないが、何とも不思議な印象を抱く。そして1度見たら忘れられないキャッチーさも持ち合わせている。この不思議なジャケットを“不気味”と捉える人もかなり多く、その不気味さに逆に魅了され吸い込まれるようにジャケ買いする人も続出したようだ。
さらにこの裏表紙も少女の顔の向きの不明確さなどが不気味がられている。さらに日本盤のライナーノーツにもやたらと怖い怖い書かれていて、まんまとみんなソーガソンの術中にはまっている感じである。
個人的にはこの水撒き少女よりも夏の住宅地によくいる水撒き熟女のほうが怖い。たまに前を通るときずいぶんとギリギリまで水を撒いてる熟女いるね。一応信用はするけどちょっとドキドキするねあれ。以前水撒き熟女の目の前を通ったときに一瞬水を撒くフェイントをかけられたこともある。本当にああいうのはやめてほしい。まったく、水かかってないのにヒヤっとしたわ。(水かかってないけど水とかけてみました☆)
それより不気味云々は抜きにして、何気に水のアーチと地平線が交差していることでより画面に動きが出ている点も細かい芸として見逃せない。何にせよこのアルバムほどジャケットのインパクトが先行している例もそうそうないだろう。内容は音のみを聴けばいたって優麗なフォークロックなのだけど。ただジャケットありきで聴くとこれまた不気味に聴こえなくもない曲もあったりなかったり……。