バンドのイメージがひと目でわかる衝撃のデビュー作/ブラックサバス『黒い安息日』 平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第10回:バンドのイメージがひと目でわかる衝撃のデビュー作/ブラックサバス『黒い安息日』
今回ご紹介するのはこちら。
ブラックサバス『黒い安息日』(1970年)
今回は世にも恐ろしきブラックサバスのデビューアルバム『黒い安息日』を。ブラックサバスといえばヘヴィメタルのパイオニア的存在。ヘヴィメタルの重々しいサウンドや悪魔的イメージの源流はほかでもないブラックサバスにあるのだ。特に初代ボーカリストのオジー・オズボーンはロック界でもトップクラスの奇人として知られており、コウモリの頭を噛みちぎったり、鳩の頭を噛みちぎったり、文化遺産で立ちションしたり、いいギタリストを発掘したりととにかく奇行が目立ち、ブラックサバスの悪魔的イメージは彼のキャラクターによるところが大きい。
さらにそのサウンドも何か不穏な影に追われているような、まるで“悪夢”という概念をそのまま音にしたかのような独特すぎるサウンドで、同じハードなサウンドで時期的にも近いレッド・ツェッペリンとはまた違った衝撃を世に与えた。
そんな彼らの衝撃のデビューアルバム『黒い安息日』。発売日が13日の金曜日という徹底した不気味キャンペーンぶり。ジャケットは写真家のマーカス・キーフの手によるもの。まさにこれぞブラックサバスともいうべきジャケットで、ブラックサバスは知っているけどこのアルバムは知らないという人が見ても「ブラックサバスっぽいね」と言いそうなほどバンドのイメージを一発で印象づけるジャケットだ。
微妙な画像の粗さが女性の表情を読み取りにくくしており一層恐怖感を煽る。おそらくあと一歩でも近づいたら彼氏にされてしまうのだろう。
また、ちょっと前(※第7回参照)に紹介したトゥリーズの『オン・ザ・ショア』の不気味さと比べると、近い時期でありながらこちらはかなりわかりやすくストレートにホラー的雰囲気を押し出しており、しっかりと世間にバンドの個性を伝えることに成功している。
そんな悪魔的イメージで売り出されたブラックサバスだが、オジー・オズボーンにとっての永遠のアイドルはビートルズ。オジーは言う。「俺はジョン・レノンとポール・マッカートニーに憧れてオジー・オズボーンになっちまった」。