影と陽が共存するロック界の至宝/イーグルス『ホテル・カリフォルニア』 平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第11回:影と陽が共存するロック界の至宝/イーグルス『ホテル・カリフォルニア』
今回ご紹介するのはこちら。
イーグルス『ホテル・カリフォルニア』(1976年)
いやあ、何とまあ胸が締めつけられるようなジャケットだろうね。ロック黄金期と言われる1970年代を代表するバンド、イーグルス。とにかく売れに売れまくった彼らのキャリアを代表する名盤。
いかにもアメリカのバンドらしい乾いた感じと開放感のあるサウンド。とはいえ決して能天気でもなければ純粋さも感じない。どこか陰りすらも感じる異様なアルバム。やはり表題曲『ホテル・カリフォルニア』の印象が強いせいだろう。イントロのギターの音色が鳴り響いた瞬間、その場の空気が変わる。まさにジャケットのような日没時の薄暗いホテルの光景が頭にグワッと広がる。シニカルな歌詞、すべてのフレーズが印象的なギターソロ、そしてラストのギターのアンサンブルはロック界の至宝だ。
世に完璧なものなどないとよく言うが、『ホテル・カリフォルニア』、この曲は完璧だ。ジャケットのホテルはカリフォルニアに実在するホテルで、今やロックファンにとっての聖地となっている。曲を聴いて浮かぶイメージそのままのジャケットで、明るく開放的なイメージのあるカリフォルニアではあるが、日没時の薄暗さもありどうしても陰の要素を感じずにはいられない。
画面の下半分は真っ暗闇。そこから覗くホテルは華やかな世界のようにも見える。きっとそこに行けば楽しく快適に過ごせるのだろう。しかし歌詞にあるとおり、この酒(スピリット)のないホテル、入ったら2度と立ち去ることはできないのだ。
あえてホテルをはっきりと映し出さないところなど、曲の伝えたいことを見事に1枚の写真で表現した素晴らしいジャケットだ。ロックに限らず、エンターテインメントの世界に生きる我々も知らぬ間にホテル・カリフォルニアの住人になっているのかも知れない……。
そもそも、
そこまで、
売れてないってか。
やかましいわ。