日本ロック史の隠れた超名盤/the brilliant green『BLACKOUT』 平井”ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2018/10/16 12:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


第12回:日本ロック史の隠れた超名盤/the brilliant green『BLACKOUT』


今回ご紹介するのはこちら。

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the brilliant green『BLACKOUT』(2010年)

懐かしい~と言う人もいるかも知れない。1990年代のJ-POPを通ってきた人ならきっと知っているだろう。テレビの音楽番組でダウンタウンの松本人志さんに「歯磨き粉みたいな名前」と言われていたあの人たちである。

1997年にデビューし、初期の頃はいかにもUKロックの影響下にある湿り気のあるサウンドと全英語詞の曲でアングラな雰囲気をムンムン出していた彼ら。そして1998年に『There will be love there -愛のある場所-』がドラマの主題歌に使われ、湿った空気感はそのままに日本語詞も取り入れメロディはよりキャッチーになり、一気に大ヒット。以降ヒット曲を連発するも一時バンドは活動休止になりボーカル・川瀬智子さんのソロプロジェクト(Tommy february6、Tommy heavenly6)に重きが置かれるようになる。

そして2007年、再びバンドが動き出し、1990年代にヒットチャートを賑わしていた頃と変わらぬ、いや、その頃を上回る素晴らしい楽曲を生み出していた彼らだが、かつてのようなヒットには恵まれなくなる。内容よりも流行度を重要視する世間の風も要因としてあると思うが、そもそも彼らが活動を再開したこと自体あまり知られていなかったっぽいので、単純にプロモーション不足もある気がする。しかしだ。僕は1990年代からの彼らのファンのひとりとしてでっけぇ声で伝えたい。the brilliant greenは活動再開後こそ黄金期だ。とにかく2007年から立て続けに発売されたシングル『Stand by me』(2007年)、『Enemy』(2007年)、『Ash Like Snow』(2008年)をまず聴いてほしい。スーパーミラクルボンバーファイヤー名曲なのである。

そこへ来て2010年、8年ぶりのオリジナルアルバム『BLACKOUT』である。正直日本ロック史に残すべき超名盤だと思う。スーパーミラクルボンバーファイヤーフランシスコチョップスティッカー名盤である。初期の川瀬さんの気だるい感じの歌い方は洗練され聴きやすくなり(初期は初期で良かったけど)、楽曲はほとんどの曲がシングルカットできそうなクオリティを誇る充実度だ。これほどのアルバムを埋もれさせるのは歴史の罪だ。本当にもっと多くの人に知ってもらいたい。

そして肝心のジャケットだが、実は初回限定盤は上の写真とは異なり、タイトルどおりほぼ真っ黒なジャケットで、それはそれでUKロック的でクールなのだが、それよりも麗しき川瀬嬢の顔面ドアップを堪能できるこちらの通常盤を持っていたいと思うのは男子として当然のことでしょうが。何にせよバンド名もタイトルも表記せずただ電話をする美女がドアップで写るこのジャケット、興味を惹くのに充分な力があると思う。

そうして興味を持った人達にはぜひともこのアルバムの素晴らしい音をその耳マンにしっかりとぶち込んでもらいたい。何しろこのアルバムは21世紀の日本音楽界でも屈指のスーパーミラクルボンバーファイヤーフランシスコチョップスティッカーフォーエバーアメイジングスパイダーマンインターナショナルエアロスミスダレノガレコモドドラゴンケロケロケロッピメロンキネンビサンシロウコミヤムカシトガッテタフライングマジカルオセアニア ジャッキーサイクロンまた来週。

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)

ひらい“ふぁらお”ひかる●1984年3月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に新道竜巳とのお笑いコンビ“馬鹿よ貴方は”を結成。数々のテレビ/ラジオ番組に出演するほか、『THEMANZAI2014』『M-1グランプリ2015』の決勝進出で大きな注目を集める。個人では俳優やナレーターとしても活躍。音楽・映画観賞や古代エジプト、恐竜やサンリオなど幅広い趣味を持つ。