リッチー・ブラックモアの多彩な才能を堪能/ブラックモアズ・ナイト『シャドウ・オブ・ザ・ムーン』 平井”ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第13回:リッチー・ブラックモアの多彩な才能を堪能/ブラックモアズ・ナイト『シャドウ・オブ・ザ・ムーン』
今回ご紹介するのはこちら。
ブラックモアズ・ナイト『シャドウ・オブ・ザ・ムーン』(1997年)
ディープ・パープル、そしてレインボーというハードロック界に絶大な影響を与えた偉大なバンドに在籍し、ギタリストとしても多くのフォロワーを生んだカリスマ、リッチー・ブラックモア。そんなリッチーがキャリアを通じてもっとも長く続けているバンド、それこそがこのブラックモアズ・ナイトである。ディープ・パープルやレインボーにおけるリッチーのハードで革新的で狂気的なギター演奏に熱狂していた人たちは、レインボーの活動休止後久々に音楽業界に戻ってきたリッチーの、あまりにもハードロックとはかけ離れた穏やかで静かなブラックモアズ・ナイトの音楽性に絶望を禁じ得なかった。エレキギターをアコースティックギターに持ち変え、中世の吟遊詩人のような格好で優しいフォークミュージックを奏でる。そう、リッチーはもはやハードロックの人ではなくなってしまったのだ。
しかしディープ・パープルや、特にレインボーの時代にはリッチーが本当にやりたいのはブラックモアズ・ナイトのような方向の音楽なのだろうな、というのはすでに表れていた。ゆえにもっとも長く続いているバンドなのだろうし、そもそもハードロックでなくなったからといってリッチーのギタリスト・作曲家としての能力が衰えたわけではまったくなく、ブラックモアズ・ナイトとしてもリッチーのキャリアのなかでも屈指の名曲をいくつも生み出している。
それに個人的にもリッチーはエレキよりアコースティックギタリストとしてのほうが好みだったりする。そもそもハードロックおよびヘヴィメタルファンのなかにはちょいと頑固すぎるというか、スピード感がなければ音楽じゃない、ヘヴィでなければ音楽じゃないくらいの見方をしている人が少なくない気がする。忘れちゃいけないのが我々は所詮ただのファン。何を生み出せるわけでもないただの聴き手がそんなに頑固になっても誰かを傷つけるか自分が損するだけだ。それによってせっかくの優れた作品を埋もれさせちゃあまりにももったいない。
ということでディープ・パープル、レインボーは好きだったけどブラックモアズ・ナイトは手をつけてないという人、ジャンルは違えどいいものはいいのでぜひとも聴いてもらいたい。
また来週。
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あやっべ! あ、やっべ。やっべぇ。ジャケットのこと書いてねえやっべやっべぇ。やっべぇよやっべ。おい。やっべぇよ。やっべぇってまじ。おい。やっべぇ~。
『シャドウ・オブ・ザ・ムーン』はブラックモアズ・ナイトの記念すべきファーストアルバム。ジャケットはバンドの世界観をそのまま表現したような、中世の音楽リサイタルの宣伝ポスターのようである。植物のツタがまるで幕のような役割を担っていて、これから始まるリッチーの新しい物語の幕開けを告げるような、ファーストアルバムにふさわしいジャケットだ。このジャケットを鑑賞するだけでも充分楽しめる。
ちなみに正面の美しい女性はボーカルのキャンディス・ナイト。リッチーより20歳以上年下の奥さんである。ミュージシャンとしてのキャリアがあったわけではないが歌は上手く、この時点ではまだ控えめな歌い方をしているが、作品ごとに自信をつけていってどんどん表現力豊かなボーカリストになっていく。声質的にも音楽にマッチしている。個人的に次来日したら必ず観に行きたいバンドのひとつ。