夢のコラボレーションといったところだろうか〜人間椅子『怪人二十面相』〜平井“ファラオ”光（馬鹿よ貴方は）連載

小説を僕は読んだことがないのでそこは何とも言えないが、相変わらず一筋縄ではいかない独特の音作りで、スローからミドルテンポ主体の楽曲をメインに、ハードロック然としたリフやメロディアスなギターソロなどが複雑な構成と陰鬱な雰囲気のなか絡み合い人間椅子にしか生み出せない独特の世界観を作り上げている。また、無駄に音に厚みを出すこともしていないので、各楽器が引き立ち、実力は間違いなく一流プレイヤーである彼らそれぞれの音をしっかりと味わうことができる。なかでも『芋虫』は圧倒的名曲である。

ジャケットは彼らと親交の深い漫画家の大越孝太郎の手によるもの。いかにもサブカル的な雰囲気漂うデザインで、音楽性共々人間椅子しかやらなそうな独特のジャケットである。美しいかどうかは二の次として漫画の表紙のようなデザインをCDのジャケットで表現することがまずおもしろい（単純に画力も高い）。人間椅子、江戸川乱歩、大越孝太郎。それぞれ音楽、文学、漫画という異なるジャンルのなかで同様の世界観を表現している者たちによる夢のコラボレーションといったところか。明智小五郎がやくみつるさんにみえるが。

今年ニューアルバムも発表しそれがまた大好評の人間椅子。独特すぎる唯一無二の音世界は今後も代わりのきかない貴重な存在として日本音楽界にまとわりついていくことだろう。

今回「独特」という言葉の便利さを改めて実感しました。