日本のロックを語る上で避けては通れない金字塔的名盤〜カルメン・マキ&OZ『カルメン・マキ&OZ』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
[2019/11/20 12:00]
『カルメン・マキ&OZ』は、もともとは『時には母のない子のように』などの哀愁のあるフォークソングを歌っていた彼女が、ジャニス・ジョプリンに出会ったことでロックに目覚め結成したバンドのファーストアルバムである。しばしばハードロックの名盤のひとつとしても挙げられることもあるだけにサウンドはかなりヘヴィな部分もあり、各曲が長尺で展開が多いところはプログレの影響もあるように思われる。そして根っこに渦巻く精神はブルースのもの。この時代特有の独特の暗さと日本的などろどろとした感情が同居した緊張感のあるアルバムである。歌唱面では彼女独自の表現力をみせつけながらも、シャウトなどところどころにジャニスの影響がうかがえる。
ジャケットはデザイナーの名前が記載されていないため誰の手によるものかは不明。コラージュのように見えるが絵柄は統一されており、背景は異常にシンプルなのに人物の描写は細かく、にぎやかな雰囲気のように見えてどこか陰も感じるという奇妙なデザインのジャケットである。しかしこういった意図の汲み取りづらいところも含めて1970年代ならではといった感じがする。非常に印象的な、一度見たら忘れられないタイプのジャケットである。
『カルメン・マキ&OZ』は当時ロックが主流ではなくフォークブーム真っ只中の日本音楽シーンにおいて異例の大ヒットを記録したようだ。ジャンルなど関係なく作品そのもののレベルの高さで評価されたということである。まさに芸術のあるべき姿だ。