うるさいのはうるさい。それは変わらない〜ナイトウィッシュ『ワンス』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
[2020/1/16 12:00]
何しろ彼女はメタルボーカリストの土俵にいながら本格的なオペラ歌手としての下地もあり、その艶やかなソプラノボイスと歌唱力はシンフォニックメタルというジャンルにおいて理想的とも言えるほどの親和性を誇っていたのだ。そんなターヤは2005年にバンドを解雇されてしまうのだが『ワンス』はターヤ在籍中の最後のアルバムだ。
もともとヨーロッパでは人気の高かったナイトウィッシュがこのアルバムでアメリカでの人気も獲得し、それまでで最も大きな成功を手にしたアルバムとなった。実際その成功に見合う充実した内容で、劇的な展開のなか、ターヤのソプラノボイスとベーシスト兼ボーカルのマルコ・ヒエタラの野性味あふれる声の対比がお互いを引き立てあい、さらに楽曲のドラマ性をも際立たせている。また全編を通してメロディの美しさも聴きどころである。
ジャケットは実際に存在する天使の像がモチーフとなっている。作者はウィリアム・ウェットモア・ストーリーという彫刻家の『悲しみの天使』。どうやら亡くなった彼の奥さんの墓らしい。全体が寒色で統一され、像そのものも霧がかったように薄ぼんやりとしか映っていないのが、いかにもヨーロッパのシンフォニックバンドらしい冷気を感じさせる。
ヘヴィメタルに対して「うるさい、野蛮、怖い」などというイメージをもっている人はとりあえずナイトウィッシュを聴いてみることをおすすめする。きっと「うるさい、綺麗、泣ける」という印象に変わるはずだ。
うるさいのはうるさい。それは変わらない。