誰がこれを見てハードロックのアルバムだと思うだろうか〜TMG『TMG Ⅰ』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
まず何といってもそれぞれのバンドにあるような陽気さがない。全体的にミドルテンポの曲主体でブルージィ&ヘヴィな要素が強いため、売れることなど二の次でとにかく松本氏が自分の好きな音楽を好きにやったような印象を受ける。またこのバンドの最大の個性とも言えるのが、メロディやサウンドに日本的な要素を多く取り入れていることである。松本氏自身が確かこのあたりの時期から日本人ミュージシャンとしての自覚を強く持ち始めた頃だったと思うので、その色がこのアルバムにも反映されたということだろう。全体的に暗い印象を受ける大きな要因のひとつがそれである。
その結果、世界中のどこにも見当たらない唯一無二の個性を発揮するに至っているのだから、日本人とアメリカ人が混同した、日本人がリーダーのバンドとしてはまさにあるべき姿なのではないかと思う。
肝心のギターは日本的なメロディを奏でるソロが素晴らしい。またこの人の場合、バッキングも魅力的なのでそのあたりもこのアルバムでは大いに楽しめる。エリックの一瞬で彼とわかる特徴的なボーカルも絶好調である。
ジャケットがこれまた思いっきり和に寄せたデザインで、誰がこれを見てハードロックのアルバムだと思うだろうか。謡曲のジャケットでなければおかしい。それだけ松本氏が和にこだわりを持っていた時期だったということだろうが、個人的にはこのくらい日本人としての個性を主張していいと思う。クレジットを見るとHACHU&yorke.と書いてあり、HACHUとはどうやらイラストレーターの高橋信雅という人のようで、yorke.という人もまた日本のイラストレーターで、B'zのジャケットもいくつか担当しているようだ。どちらも日本画家ではないようだが、見る限り日本画もしっかりと学んだ上でこのジャケットを手がけていると思う。
楽曲に関して、上で書いた通り決して売れるタイプの音楽ではないので、一度聴いただけではピンとこない人も多いかもしれない。しかし、一度だけで諦めず何度も聴き込むことをお勧めしたい。その良さを理解できたとき、ジャケットも含めて過去に通ってきた名盤たちのなかでもきっと忘れがたい特別な位置を確立するアルバムになると思う。
個人的にはずっとパートⅡを期待しているので、唐突にまた豪華なメンツを集めてやってほしい。
唐突にまた豪華・・・・・・TMG!