なぜだ。おじさんが何かしたのか?〜ヴァン・ヘイレン『ヴァン・ヘイレンⅢ』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
ヴァン・ヘイレンファンの間では問題作、いやそれどころか駄作的な扱いを受けてしまっている本作。ボーカルがバンドに合っていない、全体的に暗い、ヴァン・ヘイレンらしいキャッチーさがない、などといろいろ言われているが、僕に言わせればはっきり言ってまったくもってそのとおりである。
いや、厳密に言えばゲイリー・シェローンがヴァン・ヘイレンに合っていないということはないと思う。彼は素晴らしいシンガーだし、エクストリームの音楽性とそう遠くないヴァン・ヘイレンでそこまで違和感があるようにも個人的には思わなかった。おそらく初代、2代目の圧倒的な力量と比べてしまっての評価だと思う。ただ全体的に暗い、キャッチーさがないというのは本当にそのとおりで、底抜けの明るさこそがヴァン・ヘイレンという見方からするとやはり本作は彼ららしくないアルバムということにはなってしまう。同じく暗さを感じさせるアルバムだった前作『バランス』(1995年)は単純に楽曲が良かったので聴き込めたが、正直、本作はその点もちょっと弱いと感じた。
そしてジャケットがこれまた一体どうしたことか。これは何をやってるんだ?
白黒で画像も粗いので一瞬状況が読みづらいが、上半身裸のハゲたおじさんが大砲の弾を腹に撃ち込まれているようである。なぜだ。おじさんが何かしたのか? しかしおじさんもまるで撃ってこいと言わんばかりの構えである。脂肪で衝撃を吸収する実験だろうか? そうだとしたらまだコミカルでよかったものの、当時の状況を考えるとバンドと確執のあったサミー・ヘイガーをおじさんと見立てて攻撃しているという可能性が高い。しかし、だとしたらせめてもっとセンスを感じるものに見立ててほしかった。
内容といいジャケットといい、陽気さが最大の魅力であったバンドの陰湿な一面が見えてしまった無念なアルバムである。