「こんな瞬間切り取る?」と突っ込みたくなる何気なさ~サンディ・デニー『ザ・ノース・スター・グラスマン・アンド・ザ・レイヴンズ』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2020/3/4 12:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


第82回:「こんな瞬間切り取る?」と突っ込みたくなる何気なさ


今回ご紹介するのはこちら。

サンディ・デニー『ザ・ノース・スター・グラスマン・アンド・ザ・レイヴンズ』(1971年)

<あの海外セレブの背後に偶然ロバートが写り込む奇跡>

英国最高の歌い手のひとりとも言われるサンディ・デニー。元はフォークロックバンド、フェアポート・コンヴェンション(この連載でも一度紹介している)のボーカルとして知られていたが、1969年にバンドを脱退。その後フォザリンゲイというバンドを結成するが短期間で解散。ソロ活動に突入し最初のソロアルバムとなるのが本作である。

古いトラディショナル・ソングを現代風にアレンジしたフォークロックというフェアポート・コンヴェンションの音楽性(もちろんオリジナル曲もある)をそのまま受け継いでおり、温もりを感じるサウンドとサンディの素朴ながら深みのある歌声が相変わらず深いイマジネーションを与えてくれる。どっぷりとアルバムの世界に入り込んで聴いてももちろんいいが、なんとなくBGMとして部屋で流しておくだけでも素敵な空気感を味わえる。

ちなみにサンディはレッド・ツェッペリンのアルバム『Ⅳ』収録の『限りなき戦い』でも独特のミステリアスなコーラスを聴かせており、むしろそっちで知っているという人も多いかもしれない。(次ページへ)