髭男爵さんより絶対僕のほうがルネッサンス好きだぞ!~ルネッサンス『お伽噺』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第88回:髭男爵さんより絶対僕のほうがルネッサンス好きだぞ!
今回ご紹介するのはこちら。
ルネッサンス『お伽噺(原題:novella)』(1977年)
我が事務所の先輩である髭男爵さんは企業のパーティで「ルネッサーンス」を言うだけの仕事があるらしい。それでお金もらえるなんて死ぬほど羨ましい。
プログレッシブロック全盛の1970年代にその名を残した偉大なるバンド。ルネッサンスと聞くだけで上記のエピソードを思い出して嫉妬の気持ちが芽生えてしまうのであまりその名を見たくはないのだが、皮肉にも数いるプログレバンドのなかで僕が最も好きなバンドである。それほど彼らの音楽は素晴らしい。
あの3大ギタリスト(エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ)を輩出したヤードバーズのキース・レルフとジム・マッカーティにより結成されたバンドだが、その音楽性はヤードバーズのようなブルースに根ざしたロックとは真逆の、クラシック、フォークの要素を取り入れたシンフォニック・ロック。そのファンタジックな世界観は聴き手の意識をイギリスの奥深い妖精の森にまで連れて行ってくれる。
そしてその美しい楽曲の魅力を最大限にまで引き上げているのが女性ボーカル、アニー・ハズラムの存在である。オペラ的な歌唱法と5オクターブにも及ぶと言われる声域を駆使した圧倒的な歌唱力、それに独特のややこぶしがかったような節回しに、何よりも声そのものの美しさ。個人的にはアニーこそ1970年代最高の女性ボーカリストだと思う。
『お伽噺(原題:novella)』はルネッサンス(また思い出しちゃった)の7枚目のスタジオアルバム。プログレバンドらしく長尺の曲が多いためトータル40分のなかでたったの5曲のみ。しかし『お伽噺』というタイトルどおり全体がひとつの壮大な物語のように展開していき、その素晴らしい構成力はそんじょそこらのコンセプトアルバムなどひぐちカッターのごとく(しまった!)切り捨てられるほど見事な統一感でまとまっている。
ジャケットデザインもまたしかりである。イラストレーターのパメラ・ブラウンの手によるいかにも絵本の表紙のようなデザイン。これから始まるお伽噺に聴き入ろうとする子供たちと同じようにこちらにもワクワク感が伝わる美しいジャケットだ。いかにもイギリスのシンフォニック・プログレバンドらしいデザインでもある。ちなみにアメリカ盤では若干デザインが異なっている。
『ハリー・ポッター』の世界観がこれほど受ける日本ならルネッサンスも受けないはずはない。古いバンドではあるが今の若い人にもぜひ聴いてみてほしい。
あと何か営業ください。 髭男爵さんより絶対僕のほうがルネッサンス好きだぞ!