爽やかな風のなかに時折覗かせる狂気~スガシカオ『PARADE』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第89回:爽やかな風のなかに時折覗かせる狂気
今回ご紹介するのはこちら。
スガシカオ『PARADE』(2006年)
万人に認められているというよりちょっとコアな音楽ファンから厚い支持を受けている人という印象だが、その名前は誰もが言いたくなるようなちょうどいい語感、語呂の気持ちよさがあり、知名度で言えば多分国内アーティストのなかでもトップクラスだと思う。
「スガシカオ」はやっぱり無意味に言いたくなる響きである(しかもこれが本名という)。もし子どもができたら名前は「スガシカオ」にしたいと思う。
音楽的なイメージはファンキーなリズムに乗せた美しいメロディ、そこに心地の良いハスキーボイスでシニカルな内容の歌詞を歌うという印象。個人的には色に例えると白を感じさせる人だが、純白というわけではなくどこが危険な香りのする白。形状で言うと白い鋭利な二等辺三角形といった感じ。ポップすぎずダークすぎず、もっと売れてもいいと思う反面もっとコアな存在だったとしてもおかしくははない気もするある意味不思議な存在。
ただ本作『PARADE』に関してはかなりポップ色が強い作品で、全体的に夏の爽やかな空気感を感じさせる誰でもが聴きやすいタイプのアルバムとなっている。ただそれでも彼らしさが失われているわけでは全然なく、確実に売れる気のないと思われるディープな歌詞も随所に見られるし、さまざまなタイプの楽曲のなかでメロディの組み立て方などに彼にしか出せない“節”が出まくっていて、結局のところどこを切り取ってもちゃんとスガシカオのアルバムになっているのである。
と言ってもまあ結局のところ大事なのは曲がいいかどうか。その点において僕は非常に充実している作品だと感じた、それだけのことと言えばそれだけのことだ。なかでも『午後のパレード』はそんな細かい屁理屈など捻じ伏せるだけの圧倒的なパワーがある。
ジャケットもアルバムの音楽性に合わせて夏を感じさせる爽やかなデザイン。やっすい表現だが「オシャレ」である。表参道か代官山にあるブティックのような雰囲気だ。またこの人自身が非常に絵になるタイプの人なのでこういったオシャレな雰囲気がよく似合う。ただこの人の音楽を知ったうえで改めて見るとその醸し出すオーラの感じ方もちょっと変わってくるのだが。
とにかくスガシカオ入門編としてこのアルバムは非常におすすめである。爽やかな風のなかに時折覗かせる狂気をぜひ楽しんでほしい。
最後に気持ちいいのでたくさん言っておこう。
スガシカオスガシカオスガシカオスガシカオスガシカオ……。