おっさんたち楽しそうである。~サンダー『マグニフィセント・セヴンス』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2020/5/13 12:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


第92回:おっさんたち楽しそうである。


今回ご紹介するのはこちら。

サンダー『マグニフィセント・セヴンス』(2005年)

<あの海外セレブの背後に偶然ロバートが写り込む奇跡>

レッド・ツェッペリン、ディープ・パープルをルーツとし、クイーンやホワイトスネイクといった大物をその長い歴史のなかで輩出してきたブリティッシュハードロックシーンにおける1990年代の大物と言えばこのサンダー。ベタなバンド名のようで意外と彼ら以前には聞いたことがないという不思議(どっかにはいたかもしれないが)。

イギリスのバンドらしい叙情性をもちながらもアメリカのロックンロール創成期の空気感やブルースからの影響も色濃く感じさせ、2大ロック大国のいいとこ取りをしたようなバンド。ギタリストのルーク・モーリーはその作曲能力の高さから、かつてデイヴィッド・カヴァデールからホワイトスネイクへの加入を要請されたという噂もあるほどの才能の持ち主である。

『マグニフィセント・セヴンス』はそんな彼らの7枚目のスタジオアルバム。「7」という数字から連想された黒澤明監督の『七人の侍』のハリウッドリメイク版『荒野の七人(The Magnificent Seven)』からその響きを拝借し、さらにジャケットもそのイメージに合わせモロに西部劇風なデザインとなっている。この絶妙に古臭さを感じさせる雰囲気が何とも粋な味わいを出しているし、西部劇の世界観と親和性の高いサザンロックからの影響も受けている彼らなので、その音楽性にも非常にマッチしている。

また表紙のみでなくブックレットの隅々に至るまでさまざまな遊び心が施されており、メンバーの写真が指名手配書になっていたり、そこにそれぞれの容疑内容まで細かく書かれていたりする。しかもその内容が「ダンボールによる自傷行為」や「家畜泥棒」など、まあまあのセンスを感じさせやがる。さらに裏表紙には「このCDはいつでもどこでも超特大音量で聴くこと。さもなければ有害と化すおそれあり。」という警告文まで書いてある。おっさんたち楽しそうである。

内容は個人的には中々といったくらいなのだが、1曲目の『 I Love You More Than Rock 'N' Roll』がとにかく半端じゃなくかっこいい。ボーカルのダニー・ボウズのどこか気だるさを感じさせる声はこういうサザンロック風の曲に本当によく合っている。クラシックロックが好きな人ならこの曲のために買っても決して損はないと思う。

僕の愛するゴットハードもそうだが、今時珍しいくらいに古典的なスタイルでしっかりと地力のあるこういったハードロックバンドにこそがんばってもらいたいし応援もしたい。

最後に僕から警告。

「本当に超特大音量で聴いたらそのほうが有害と化すおそれがあるので鵜呑みにしないように」

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)

ひらい“ふぁらお”ひかる●1984年3月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に新道竜巳とのお笑いコンビ“馬鹿よ貴方は”を結成。数々のテレビ/ラジオ番組に出演するほか、『THEMANZAI2014』『M-1グランプリ2015』の決勝進出で大きな注目を集める。個人では俳優やナレーターとしても活躍。音楽・映画観賞や古代エジプト、恐竜やサンリオなど幅広い趣味を持つ。