どこかシュールで深みを感じさせるジャケット~ドリーム・シアター『ア・チェンジ・オブ・シーズンズ』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第115回:どこかシュールで深みを感じさせるジャケット
今回ご紹介するのはこちら。
ドリーム・シアター『ア・チェンジ・オブ・シーズンズ』(1995年)
先週同様、今週も100回記念特別企画(https://33man.jp/article/column38/009021.html)で購入したアルバムのひとつを。第2弾はアメリカを代表するプログレッシブメタルバンド、ドリーム・シアターのご登場だ。
おそらくプログレメタルと呼ばれるジャンルのなかでは頂点にいる存在で、ただでさえ優れたテクニックがジャンルそのものの特徴にもなっているプログレとメタルを融合しちまってるもんだから、その演奏技術たるやもはやビックリ人間である。
ちなみに僕はずっとこのアルバムは純粋なオリジナルスタジオアルバムだと勝手に思い込んでいたのだが、扱い的にはミニアルバムで、しかも1曲目以外はライブ音源でしかもカバー曲であるということを買うまで知らなかった。ライナーノーツを読んで初めてそれを知り正直かなりおったま遣隋使(出典:脳みそ夫)だったのだが、聴いてみるとこれが大満足の出来であった。
アルバム中、唯一の純粋な新曲である1曲目『ア・チェンジ・オブ・シーズンズ』はプログレバンドらしく23分にも及ぶ長尺の曲だが、非常によく練られた完成度の高い曲で、頭から終わりまでフック満載でまったく集中力を途切れさせない。さらにすごいのが2曲目以降のライブ音源のカバー曲集で、まず曲の冒頭や終わりに歓声が入っているとはいえ、曲そのものはスタジオ録音のものなんじゃないかと思うほどの圧倒的な演奏技術で、その完璧さはもはや「美しい」とすら思えてきてしまうほどのレベルである。そしてカバーはエルトン・ジョンやクイーンなどの伝説級を取り上げているが、これがどれも素晴らしく、特にレッド・ツェッペリンのカバーに関してはそもそもバンドとしての個性が真逆のタイプなので聴く前はどうなのかと思ったが、しっかりと自分たちなりの解釈で自然にまとめあげられていて感服させられた。さらにアルバム全体の構成も美しく全体がひとつの曲のようによくまとまっていて、特に『ボヘミアン・ラプソディ』の位置はあそこ以外考えられないくらい完璧な配置だと思う。
以上のことからもやはりドリーム・シアターはただ上手いだけではない、1ランク上のバンドだなと改めて実感させられた。
そしてジャケット。これがまた個人的には彼らのアルバムのなかでもかなりいいジャケットだと思うのだ。冬景色のなかで真夏のような格好で座り込む熱帯地方出身ぽいハンサムな少年と、春を感じさせる一輪の花。アルバムタイトルのどおりひとつの空間で各季節を表現しているのだろう。秋はどれだろうか。バケツ?秋と言えばバケツなの? 何にせよシンプルなテーマながらどこかシュールで深みを感じさせる素敵なジャケットだ。
ミニアルバムとはいえそのボリューム、満足度はそんじょそこらの半端なアルバムをはるかに上回る。ドリーム・シアターというバンド自体の入門者にもお勧めできるアルバムだ。
読書の秋、スポーツの秋もいいけどこのアルバムを気に入ったら皆バケツの秋を楽しみましょう。