ジャケ買い族なら放っておかないタイプのジャケットだ~フリートウッド・マック『タンゴ・イン・ザ・ナイト』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第114回:ジャケ買い族なら放っておかないタイプのジャケットだ
今回ご紹介するのはこちら。
フリートウッド・マック『タンゴ・イン・ザ・ナイト』(1987年)
少し前にこの連載100回記念として行わせていただいた、ディスクユニオンにて今後連載で取り上げられそうなジャケットのCDを1万円以内で買えるだけ買う企画、通称セコセコショッピング企画にて購入したCDをようやく取り上げられる時が来た(まだ読んでない人はぜひ読んでね。薄汚ねえ貧乏根性が炸裂しているよ)。
https://33man.jp/article/column38/009021.html
まず第1弾はフリートウッド・マックの『タンゴ・イン・ザ・ナイト』。実際に企画で買った17枚のなかで一番最初に聴いたアルバムである。
もうキャリアで言えば1960年代後半から活動を続けている大ベテランだが、時代によってその音楽性も大きく変化しているバンドでもある。そもそもはブルースロック路線で始まったバンドだが、1970年代にはソフトロック路線に変更。僕はもともとそのソフトロック時代のアルバム『ファンタスティック・マック』は持っていたのだが、どうにもいまいち入っていけないアルバムであった(ジャケットはいいのでいずれ取り上げるかもだが)。
でこの『タンゴ・イン・ザ・ナイト』を聴いた印象だが、まず『ファンタスティック・マック』と同じバンドとは思えなかった。それくらいここでも大きく音楽性が変化しているのだ。いかにも1980年代らしい時代に合わせたポップなシンセサウンド。この時代のこの手の音作りがあまり好みでない僕にとって第一印象は正直良くなかった。ただ何度も聴いていくうちに楽曲の良さを理解できるようになり、またほんのり漂うオリエンタルな雰囲気がいい隠し味にもなっていて、結果気持ちよく聴き通せる良盤であった。キャッチーな『Little Lies』やどことなくレベッカの『フレンズ』を想起させる哀愁のある疾走曲『Isn't It Midnight』などはかなりお気に入りの曲だ。
肝心のジャケットだが、ひと目でアンリ・ルソーをオマージュしていることがわかる。ルソーほど平面的でなく、より現代的に洗練させたような感じだが、誰が見ても美しいと思えるであろう良ジャケットである。ジャケ買い族(ジャケ買いの楽しさに憑りつかれている部族)なら放っておかないタイプのジャケットだ。それだけにやはりサウンドもシンセを多用するよりもっと生々しい音が良かったとはいまだに思ってたり。
何にせよとりあえずセコセココレクション第1弾は好調な出だしであった。ここから立て続けに取り上げていくのでお楽しみに。