できれば彼らに混ざって一緒に歩きたい~ブラックモアズ・ナイト『アンダー・ア・ヴァイオレット・ムーン』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第127回:できれば彼らに混ざって一緒に歩きたい
今回ご紹介するのはこちら。
ブラックモアズ・ナイト『アンダー・ア・ヴァイオレット・ムーン』(1999年)
今週は過去にも2度ほど取り上げているブラックモアズ・ナイトを。元ディープ・パープル及びレインボーのギタリストであったリッチー・ブラックモアが、奥さんであるキャンディス・ナイトをボーカルに迎え結成したアコースティックバンドである。ハードロックバンドであるディープ・パープルやレインボーのなかで時折見せていたリッチーのクラシカルな中世音楽への趣向がこのバンドで大爆発。リッチーからすれば一番やりたかったことを思い通りにやれているわけだが、結局この極端すぎる音楽性の変わりようはある意味でこれまでのファンを裏切る行為でもあり、事実パープル、レインボーまでのリッチーは好きだがブラックモアズ・ナイトは興味ないという人も少なくない。
しかしブラックモアズ・ナイトは素晴らしい。最高である。これはもう間違いなく。確かにハードロック好きの人からすればこういった穏やかなアコースティック音楽は刺激が足りないと感じるのも仕方ないかもしれないが、本質的に良いものを良いと感じられる程度の柔軟性も聴き手には必要だと思う。ただ良い作品を届けてくれるのを待つだけでなく、アーティスト側の成長についていこうとする意志を持つべきだ(まあアーティストが本気で自分のやりたいことを追究したら需要が狭くなるのは必然だが)。僕はリッチーのファンというほどではないが、ブラックモアズ・ナイトはパープル、レインボーと比べても音楽の質は落ちていないと思うし、リッチーのギタープレイでいうならブラックモアズ・ナイトのほうが好みである。
そんな素晴らしきブラックモアズ・ナイトのセカンドアルバムに当たるのがこの『アンダー・ア・ヴァイオレット・ムーン』である。オリジナル曲はもちろん、ヨーロッパ各地の中世音楽や民謡などを彼らならではの解釈でカバーした曲も多く、まさに中世ヨーロッパ音楽旅行といった雰囲気のアルバムだ。そんななかでもタイトル曲である『アンダー・ア・ヴァイオレット・ムーン』は間違いなく『ハイウェイ・スター』や『キル・ザ・キング』とも張り合える名曲だと言い切れる。
ジャケットはまさに紫の月の下、ヨーロッパの小さな街のなかを中世の吟遊詩人のようなコスプ……格好で演奏しながら練り歩くリッチー一味の絵。彼の夢を実現するためのバンドであるブラックモアズ・ナイトでこんなこともやってみたいというリッチーの願望が現れているのかもしれない。僕も日本人ながらこういった世界観には何とも言えないロマンを感じてしまう。できれば彼らに混ざって一緒に歩きたい。ギターは『なごり雪』なら弾けます。
何気にリッチーのキャリアのなかでもすでに最も長く続いているバンドであるブラックモアズ・ナイト。今後も彼には迷わずこのバンドで突き進んでいってほしい。
アーティストの成長についていけずBooBoo言うだけの者は置いていけばいい。